座禅をする人たちは、危険な集団である​というのは本当か

座禅をする人たちは危険か

残念なことに新興宗教の事件に係る報道などで、座禅自体に怪しさや不気味さを感じる人が増えてしまったことは事実です。

坐禅をするほとんどの人は、神秘的な言説を好まず、人を傷つけることをせず、ただ静かに座ること自体に平和を感じているだけであり、また世界の平和を心から願っています。

座禅に対する率直な意見「座禅をしている人は、怪しい感じがします」

端的に言いますと、オウム真理教の事件以降、座禅に対する人々の偏見が生じ、それは思いのほか大きいものとして日本社会に残ってしまっていると感じています。

座禅をしている人たちは、何か事件を起こすのではないかと考えてしまうのも無理がないほど、事件のインパクトは大きなものでした。

風評被害を乗り越えて

ぜひ実際に座禅をしている人と話をして見てください。

うるさいというよりは物静かな、エネルギッシュというよりは穏やかな人が多いです。

無理な勧誘もありませんし、何かを買わせたり、非常識なことや反社会的なことをする人はいません。

禅がしない7つのこと

  1. 神秘を語らない
  2. 反社会的な活動をしない
  3. 苦行をしない
  4. 排他的な態度を取らない
  5. 来るものを拒まない
  6. 去る者を追わない
  7. 他力を願わない

私たちの考える禅や仏教は、人を傷つけて社会を脅かすものではありません。

座禅はまず心の平静を目指すものであり、それ以外の何物でもありません。

禅がしない代表的なことを7つ、説明してみたいと思います。

神秘を語らない

座禅をして空を飛んだり、手をかざして病気が治ると言った奇跡や神秘を語りません。

反社会的な活動をしない

毒ガスを作ったり、殺人をしたりしません。

今のところ、デモ活動をするとか街宣活動をするといったこともしていません。

苦行をしない

先に述べたように人を苦しめたり、追い込んだりする修行や活動をしません。

排他的態度を取らない

自分たちが唯一絶対に正しいと考えません。

皆でこう考えなければならないというようなドグマや、絶対的な存在となるような書(バイブル)といったものがありません。

来るものを拒まない

私たちは仏教の中の禅宗、その中の臨済宗に位置していますが、他教の方が来ていただいても構いません。

人種、国籍、性別を問いません。障害をお持ちの方、性的マイノリティなど一切を排除しません。

去る者を追わない

無理な勧誘をしません。

よくも悪くも布教活動に対して禅宗は伝統的に消極的です。

他力を願わない

前項とつながることではありますが、禅宗はその体得を最初から最後まで自分でやり通せというスタンスです。

やるのも自由、やらないのも自由。

そういう意味では冷たい宗教と言えるかもしれませんし、大人の宗教とい言えるかもしれません。

やりなさいとも、頑張れとも言ってもらえません。徹底自力というわけです。

剣道や弓道といった日本文化の基底にある「禅」

それでは逆に、ポジティブな禅の影響をみていきましょう。

剣道や弓道は禅との関わりが比較的明確なジャンルと言えます。

剣禅一味というような言葉もありますし、「弓と禅」という名著も有名です。

日本には他に柔道、茶道、香道、華道など道がつくものが色々あり、精神的追求を伴う修養体系として「道」まで突き詰めた日本文化はすごい、といった言われ方もします。

禅を「道」と呼んだ

実はこの「道」というのが、すなわち禅のことなのですが、そのことはあまり知られていません。

その発生当初の検証や思想的連関はいずれ別記事にまとめたいと思っていますが、一般的にはやはりこうした習い事をしている人には禅は関係があっても、それ以外の人には関係がないと思ってしまう人もいるようです。

意外な禅への入り口

  1. アップル
  2. メンタルトレーニング
  3. 現代アート
  4. 俳句
  5. 稲盛和夫
  6. ベジタリアンフード
  7. 戦国武将

つまり、禅を狭い範疇に禅を押し込んでしまっては、実にもったいないと思います。

例えば、こんなテーマに興味のある人は、きっと禅がその世界を深めてくれるはずです。

アップル

ジョブスファン、アップルファンはジョブスのZENへの傾倒はよく知られていることと思います。

今日もシリコンバレーでは、ビジネス、新規事業、経営とZENがとても近い関係にあります。

マインドフルネスという言葉も広がりつつありますね。

メンタルトレーニング

スポーツの種類を問わず、メンタルトレーニングとして瞑想や座禅は大きな効果を発揮しています。

現代アート

禅思想や禅文化の影響を受けた現代アーティストや作品はたくさんあります。

禅を理解して体験することは、これらの鑑賞を100倍楽しいものにします。

実感、実体験こそ禅の強調するところです。

ぜひ好きなアーティストとその感覚を共有してください。

俳句

これは道がついていない文化活動ですが、泰斗である芭蕉は禅の修行者です。

芭蕉は禅の世界を詠んでいます。だからわびさびの世界なのです。

俳句は愛好家も多く、創作も盛んに行われて言いますが、禅からやろうという人は少数派です。

しかし、芭蕉からしてそうなのですから、芭蕉の俳句を味わうにしても禅を体得しているのとそうでないのでは、楽しみ方も味わいも変わってきます。

稲盛和夫

稲盛和夫のサンマーク出版の本は人気がありますね。

ビジネス系の自己啓発本としては、異例のロングヒット本だと思います。

稲盛さんも禅者です。芭蕉ファンが禅をやらないように、稲盛ファンも座らない人が多いようです。

稲盛さんが好きという方は

ぜひ稲盛さんの本が大好きというかたは、禅のことも少し調べてみてください。稲盛さんのことが分かる近道になるはずです。

ベジタリアンフード

禅とか仏教では精進料理と言いますね。

東京オリンピックを基点にますます訪日外国人が増えると飲食店でベジタリアンメニューを用意するところも増えて来ることと思います。

また、健康志向という観点でベリタリアンレシピに自宅で挑戦してみるという人も増えてくるかもしれません。

日本の禅宗では、曹洞宗の道元が調理を修行の一環として強調したことで、調理・食事を重視する伝統が続いています。

伝統的なレシピから、現代的なレシピまで精進料理のレパートリーは多彩です。

戦国武将

戦国武将で禅修行をしていない人はむしろ少ないと言えます。

武田信玄、上杉謙信、徳川家康。それぞれにブレーンとして禅僧を抱えていたりもします。

戦国時代だけではありませんが、戦国の時代と禅はとても大きな関係があり、禅は戦国武将に大きな影響を与えています。

歴史ファン、戦国時代が好きな人は、ぜひ座っていただきたいです。

日本の歴史が、自身の禅体験を通じて違ったものに見えて来るはずです。

今日でも座禅は大切にされている

いかがでしょうか、部分的ですが、剣道、弓道に限らない禅にまつわるキーワードを挙げてみました。次により具体的な人物を取り上げてみたいと思います。

サッカーの岡田監督は大事な試合前に15分ほど座るのだそうです。うまく座れると必ず勝つ、というジンクスもお持ちのようです。

あまり知られていない岡田武史と座禅

今はサッカーチームの会社経営をしていらっしゃいますね。

実業団のサッカー選手から、日本代表の選手、そしてコーチ、日本代表の監督、Jリーグの監督しての連続優勝、そして今は経営者と、常に人生を開拓されていらっしゃいます。

座禅をやっているんだ、と周囲に語る人は少ないですし、何となく憚られる風潮があるかと思います。


さらにひとこと

あなたの身近にも実はやっているという人がいるかもしれません。

岡田さんもそれほど積極的にそのことを語ってはいません。

スポーツの世界ですら、そんな感じですから、それ以外の場ではもっと言いづらい雰囲気があるのではないかと思います。

少しずつ変えていければと思っています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。少しでも座禅に対する偏見が是正できたなら嬉しいです。

監修者:「日常実践の禅」編集部
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。

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