手前味噌を作るということ

味噌を作り始めて1年。楽しい味噌づくりライフを送っている。その振り返りをしてみます。

手作り味噌のコストパフォーマンス

味噌というのは意外と簡単に作ることができる。そして意外という点においてその味で、市販のものよりも数倍美味い。なぜうまいのか、味噌屋は市販のものは高温殺菌しているからだと言っていた。賞味期限を長くして商品在庫の管理をしやすくして、味よりも安全性を重視しているということである。実際に買ってくる味噌と、作った味噌ではどのくらいコストが違うのだろうか。

  • おおよそ買ってくる味噌で1キロ700-1500円
  • 自分で作る味噌で1キロ 700-800円

参考:

手作り味噌のコストより全然大切なポイント

味噌の値段はかなりふり幅があるので一概には言えないのと、自分で作る味噌はガス代や工賃が入っていないので、単純な比較はできない。手間賃をコストとみるか楽しさとみるかでもだいぶ変わってくる。手間賃を単純に面倒な作業としてみればかなり割高ということになるし、お金を払って味噌づくり教室で味噌を作る人を考えれば、自分で作る味噌は割安である。そしてより重要な点は美味さである。

  • おおよそ買ってくる味噌 普通
  • 自分で作る味噌 ハイパー美味い、愛着というかプレミアム感大、鮮度バツグン

この手前味噌プレミアムはかなり大きいと私は思う。人によっては面倒はDIYをしたくない、と考える人もいるのでそういう人にとってはプレミアムはゼロかマイナスということになる。自分で何かを作ることが楽しい人にとっては、そういう人は料理も楽しいはずで、料理を原材料から作ることをしてみようという人にとっては、野菜づくりから始める人が少なからずいるように、味噌づくりは非常に楽しい作業になる。野菜から作るよりは半日仕事で簡単である。そして、豆、麹、塩、水という単純構成要素からなる味噌は、それぞれにこだわると面白くなる。

味噌は時間が作る

豆は大豆で北海道産が一般的である。味噌屋に行けば、それぞれこだわって仕入れてきているものを売ってくれる。麹も味噌屋・麹屋で売っているが、それぞれの店で特徴がある。冷凍だけ譲ってくれるところもあるし、自分で麹から作ってみろ、というところもある。米こうじだけでなく、玄米こうじ、麦こうじなどもある。塩も色々あるからこだわって色々探して試してみると面白い。そして、味噌は発酵、熟成するから、1か月くらいで食べてもいいし、3~4年と寝かしておいてもいい。いわゆる合わせみそというかたちで、若いものと年寄りのものを混ぜて使うと味に深いが出る。作るのは半日で、後は時間が勝手に作ってくれる。もちろん、3年、4年のものも市販でもあるが、我が家で3年、4年と熟成されたものは一味違うし、その間が何とも楽しいものである。年を取ってくると3年などあっという間に感じられるが、よく考えてみると3年も経てば子どもが中学・高校を卒業してしまう時間の長さである。実に長い時間だ。子供は学校で過ごす3年間のあいだに実に多くのことを学び、経験し、身体的に成長する。味噌も同様に麹が一生懸命働いて美味い味噌を作ってくれるのである。

参考:

最初にやってみるとき

近くの味噌屋に行って味噌を作りたいといえば、だいたいの味噌屋では味噌づくりセットを用意しているので、それを買ってくればいい。300グラムから500グラムくらいの豆(こうじ、塩も同量)を売ってくれる。樽も一緒に売ってくれるはずである。そして作り方を書いた紙も一緒に付けてくれるはずである。近くにそういう味噌屋がないという人は、ネットで「手作り味噌セット」と検索すればたくさん出てくるので、それで買ってしまってもいいだろう。やはり、作り方を書いた紙を一緒に送ってくるはずだし、ネットで調べてもいい。

  • 味噌づくり自体は半日仕事で4時間もあれば終わる
  • 前日に水に豆をつけておく。
  • 当日豆を煮る。
  • 豆をつぶして、塩と麹を混ぜる。
  • 混ぜたものを樽に詰めて1か月以上放っておく

と、この程度のことである。放置しておくと表面にカビが生えたりすることがよくあるが、取り除いてやればいい。麹パワーによるところであり、慌てる必要はない。

最強!ダシなし味噌汁

このようにして誕生した味噌でぜひやっていただきたいのが、ダシなし味噌汁である。ダシは昆布やカツオなどで取ることがあり、これをやらないことは全くの不見識のごとく扱われてしまうが、美味しい水、味噌、そして野菜があれば、美味しい味噌汁は可能であり、むしろダシはその邪魔にさえなってしまう。料亭などの味噌汁は昆布だしを一晩かけて冷水で取る。そして味噌を入れて解いて椀に入れ、具は別で用意して椀に盛り付ける。この場合にダシを取っていないと汁が水と味噌になってしまうので、うまみに欠く。そこでまろやかな味を出すために昆布だしを取る。京料理を気取れば西京味噌ということになるが、西京味噌には水飴が入っており、これで照りとうま味を出すということになる。公家料理のピントはどこまでもズレている。味噌は大豆・麹・塩だけで十分で、味噌汁にはうまい水と野菜があれば十分で、つまり野菜を水で似て味噌をとくだけの話である。野菜のダシはどれも美味しい。ダシを取ると、ダシがその味わいの邪魔をしてしまう。季節の野菜はいずれであっても美味しい。1年を通して多彩な野菜を楽しめる。野菜は食べて楽しむだけでなく、その風味・ダシから味わうのがよろしい。水と野菜だけでは新鮮とは言え喉を通らないので、塩味を足す。塩でもいいが、ここで味噌が登場するというわけである。新鮮な水と野菜に対して、少し時間差のある麹が存分に働いた調味料が加わると、味は格段に奥行きが出る。味噌も辿れば大豆と麹と塩だから、まあ大豆と米ということである。実に素朴な一椀ということである。野菜は食感を考えて適当に切るとよい。ダシは勝ってに出る。私は歯ごたえのあるものが好きなのでそのように切るし、煮る。野菜は2点くらいがよいだろう。豆腐+1点とするのも常套手段である。野菜3店、豆腐+野菜2点だと少し多いが、余っている野菜があるなら、そこで使ってしまってもいい。野菜には相性があるから色々試してみると面白い。味噌は1種類でもいいが、白みそ(短期熟成)と赤みそ(長期熟成)を3:1くらいで合わせてあげると、時間差がもう1つできるので味わいに深みが増す。割合いはお好みで結構だ。

手前味噌を楽しんでいただきたい。あくまで手前味噌なので、袋に入れて人に分けてあげるようなものではないような気がしている。途端に美味しくなくなる気がするし、どうだと人にあげる自信もない。ただ、家で自分が食べる分には世界最高であると自信を持っていえる。逆に人からもらいたいものでもない。手前味噌でよいのだと思う。自分で作れば自分にあったものが必ずできるし、自分のことを自分ですることは実に楽しいし、正しいことだと思う。