「雪裏見高節」(せつりにこうせつをあらわす):逆境でこそ問われる真価。困難に立ち向かう姿こそ美しい
冬の情緒が漂う禅語です。その情感を味わうだけでもよいですが、その含意を掴めれば味わいは倍増します。まずは読み方からです。
読み方
雪裏(せつり)に高節(こうせつ)を見る、と読みます。
見(あらわ)すと読んでも構いません。
意味
雪裏は雪の中、積雪の中という意味です。
高節は、辞書では「堅い信念、気高い節操」と出てきますが、ここではまず常緑の針葉樹、松の枝を指します。
つまり、雪が降り積もり最中に、美しい緑を発する高い松の木を葉を見るという意味になります。
含意
そのままの意味は冬の松の木の風景ですが、もちろん隠喩があります。
ヒントは松竹梅
冬は生命力が衰える厳しい季節であり、そこでも変わらない葉を持つ松・竹や、花を咲かせる梅は、強い生命力の象徴として大切にされます。いわゆる松竹梅です。
逆境に負けない強さ
つまり、冬の松とは逆境にくじけない強さの象徴です。雪の降る冬の日に、気高くそびえる松という表現で、この語はその意味をさらに強調しています。
順風であれば誰でも強い
花咲き、新緑が美しい春、緑が溢れる夏、収穫の秋、いずれも何もしなくても力が増していきます。才気煥発、弁舌さわやか、当意即妙の八方美人が逆境や困難に際して、立ち向かえるでしょうか。そういう人物はむしろ尻尾を巻いて逃げていくのが関の山ではないかという厳しい視点がこの語にはあります
困難に際して淡々と輝く
むしろ逆境では凡事徹底、質実剛健、沈黙寡言といった人物が、何にも動ぜずに淡々と対処できるというのがこの語の考え方です。春夏秋には何の人目につく花をを咲かせることもない松が、皆萎れて枯れてしまった雪の日に変わらず葉を携えている、美しい雪と松の緑のさま。これがこの語の味合うポイントです。
高節には「堅い信念、気高い節操」という意味がありました。つまり、できない理由が溢れかえる困難に際して、平時と変わらず一歩も前に進める力、安きに流れたくなる誘惑に際して、毅然と節操を保つ力を雪の松になぞらえているわけです。
実践編
せっかくですから、実際に使ってみてください。冬至から立春にかけての季節の言葉として、人生訓として使うことができます。
◆冬の寒さに際して
「雪裏見高節。散歩に出かけよう、歩いていれば温かくなる」
◆困難に立ち向かう自分へ
「雪裏見高節。本物は逆境に強い。面白くなってきた!」
◆堅実な仕事を評して
「雪裏見高節。派手にやるばかりが仕事ではない。むしろ逆というものだ。」
まとめ
禅では、春の花を愛でることよりも、冬の松を謳うことの方が断然に多いです。「冬」を大切にする禅の価値観は、かっこいいですよね。
春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり
(道元)