烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)とは
烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)は、炎で一切の不浄を焼き清める仏様です。
日本では、「トイレの神様」として信仰されていることが多く、トイレの壁にお札を貼っているのを見たことがある、という人もいるかもしれません。
トイレの浄化以外にも様々なご利益があり、貴族や武将の他、民間でも信仰されていました。
人気があったにも関わらず、現代ではあまり知られていない烏枢沙摩明王。どのような仏様なのか、詳しく見てみましょう。
仏の種類と烏枢沙摩明王のポジション
仏のイメージ
烏枢沙摩明王について知る前に、まずは仏様の種類について、ざっくり見てみましょう。
「仏様」、「仏像」としてよく知られているのは、「観音様」や「お地蔵様」、「お不動さま」「お釈迦さま」あたりでしょうか。いろいろな仏様がいることは、なんとなく想像がつきますね。
ただ、観音様とお不動さまだと、だいぶイメージが違いませんか? 観音様は慈悲深く、優しいイメージがあります。でもお不動さまは、炎を背負い、怖い顔で、厳しいイメージです。同じ仏様なのに、どうして表情もイメージも異なるのでしょうか。
仏の種類分け
観音様とお不動さまが異なるのは、仏様の種類が違うからです。
仏様は大きく4種類に分けられます。
①悟りを開いた仏の最高位「如来(にょらい)」
②人々を救いつつ自らも悟りを求める「菩薩(ぼさつ)」
③救い難い人を憤怒の表情で救う「明王(みょうおう)」
④個性あふれる仏教の守護神「天部(てんぶ)」
上に行くほど立場が上になりますが、人間からするとどの仏様も尊い存在です。
代表例)
・「如来」……大日如来、阿弥陀如来、釈迦如来など
・「菩薩」……観音菩薩(観世音菩薩)、地蔵菩薩、文殊菩薩など
・「明王」……不動明王、愛染明王、烏枢沙摩明王など
・「天部」……帝釈天、弁財天、大黒天など
烏枢沙摩明王のポジション
「明王」の仏様は、穏やかな顔では救えない人々を、怒りの顔をもって強引にでも救います(忿怒相でない明王もいます)。また、明王は如来の化身が多いです。
烏枢沙摩明王がこの「明王」というポジションの仏様だとわかると、どのような性質の仏様か、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
明王は密教の仏
「明王」は密教が生み出した尊格です。密教は、平安時代に弘法大師空海が唐から伝えました。ですので、多くは密教系の寺院に祀られているようです。
京都市の東寺や和歌山県の高野山、千葉県の成田山新勝寺など、観光地として有名な場所でも、弘法大師空海が関わった仏像や教えが今も守り伝えられています。
東寺 – 世界遺産 真言宗総本山 教王護国寺 (toji.or.jp)
〈高野山真言宗総本山金剛峯寺〉
高野山真言宗 総本山金剛峯寺 (koyasan.or.jp)
〈大本山成田山新勝寺〉
大本山成田山新勝寺 – 成田山新勝寺 千葉県成田市成田1 (naritasan.or.jp)
烏枢沙摩明王について
それでは、烏枢沙摩明王について詳しく見ていきましょう。
まずは基本情報をまとめ、後でそれぞれ詳しく解説していきます。
ここで注意したいのは、名前の表記や真言、お姿などは、宗派や寺によって異なることが多いということです。文献によって書かれていることも違いますし、仏像によってスタイルは様々です。これは烏枢沙摩明王に限ったことではありませんが、烏枢沙摩明王は民間にも広く信仰されていたため、より多様になったようです。
ここでは、その違いも含めて烏枢沙摩明王を知っていきましょう。
烏枢沙摩明王の基本情報
・名前:烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)
・住処:火生三昧(かしょうざんまい)
・真言:オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ
:オン クロダノウ ウンジャク
・お姿:顔は一面が多い。手の数は二臂、四臂、六臂など。持物は棒や剣など。
忿怒相で焔髪(えんぱつ/炎のように逆立った髪)。全身を炎に包まれている。
・化身前:不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)
・ご利益:トイレの浄化、産褥の穢れ、安産、毒蛇・悪鬼退散など
烏枢沙摩明王の読み方と表記
まず名前ですが、一般的には「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」という読み方・表記が多いようです。「うすさまみょうおう」「うすしまみょうおう」という読み方があり、表記も様々です。同じ表記で異なる読み方もあります。
・うすさまみょうおう……烏枢沙摩明王、烏枢渋摩明王、烏蒭沙摩明王、烏芻沙摩明王
烏枢瑟摩明王、烏蒭瑟摩明王、烏瑟娑摩明王など
・うすしまみょうおう……烏枢沙摩明王、烏芻瑟摩明王、烏枢澁摩明王など
烏枢沙摩明王の別名
烏枢沙摩明王の別名も様々です。こちらも同じ表記でも読み方が異なる場合があります。
・穢跡金剛:えせきこんごう、えしゃくこんごう
・火頭金剛:かとうこんごう、かずこんごう
・不浄金剛:ふじょうこんごう
・不浄潔金剛:ふじょうけつこんごう
・受触金剛:じゅしょくこんごう
焔髪を思わせる名前や不浄を浄化する能力がよく分かる別名が多いですね。
とは言え、これら別名は一般で使われることはほとんどないでしょうから、予備知識として知っておくと良いかもしれません。
元はインドの神様
明王を生み出した密教は、インドで生まれました。ですので、烏枢沙摩明王も元はインドの神様だったのです。弁財天など「天部」の仏様同様、ヒンドゥー教の神様でした。
「うすさま」という名前は、梵語ウスサマ、または梵名ウッチュシュマンが由来です。梵語の「ウスサマ」はインドでは火の神である「アグニ」のことを言ったそうです。日本に入ってきても火の力を使っているわけですね。
烏枢沙摩明王の住処
烏枢沙摩明王が住んでいるのは、「火生三昧(かしょうざんまい)」という火の世界です。火生三昧は人間界と仏様の世界の間にあり、仏様の世界に人間の煩悩が入ってこないよう、炎で焼き清めています。
仏様の世界を浄化しつつ、人間も助けているのですね。なんだかアクティブな仏様です。
烏枢沙摩明王の真言
烏枢沙摩明王の真言は、「オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ」、「オン クロダノウ ウンジャク」などがあります。こちらも宗派や寺によって異なります。
実際に寺院へ赴き仏像に祈る際は、その寺院に書かれた真言を唱えるのが作法です。多くは板や紙に書いて仏像の周りに掲げられているので、お参りする際は確認してみてください。
烏枢沙摩明王の梵字
梵字は、仏様の悟りや働きを表す文字で、日本では悉曇文字(しったんもじ)と言われています。密教では特に重要なもので、真言と梵字には仏様の力が限りなくあるとされています。
仏様それぞれを梵字一字で表したものを「種子(しゅじ)」と言い、種子が同じ仏様もいます。一字で複数の仏様を表す場合が多いようですね。また、書体もいくつかあり、異体字(いたいじ)と言って、同じ文字だけど形が違う文字もあります。奥深いですね。
烏枢沙摩明王の梵字は「ウン(ウーン)」です。阿閦如来(あしゅくにょらい)など多くの仏様が種子としています。もう一つの「ウン(ウーン)」の異体字でもあります。
烏枢沙摩明王の姿や持ち物
烏枢沙摩明王の姿や持ち物は一定していません。「焔髪で体が赤く、忿怒相で片足を上げ、全身炎に包まれている」というのが一般的のようですが、この「一般的」というのも文献や人の認識によって異なります。この多様さが、広く信仰されていた証を言えるかもしれません。
・顔:一面、三面
・目:黒目の小さな蜜目(みつもく)、体の色が黒だと赤色の目
・腕:二臂、四臂、六臂、八臂
・体の色:赤、黒
・ポーズ:片足上げ、蓮華上に半跏趺座(はんかふざ/片足を反対の足の上に乗せて座る)
・持ち物:棒、剣、羂索(けんさく)、金剛杵(こんごうしょ)、三鈷杵(さんこしょ)、
数珠、どくろ、金剛棒、法輪(ほうりん)、打車棒(だしゃぼう)、三股叉(さんこしゃ)
仏像として多いのは、一面二臂、一面四臂、一面六臂あたりでしょうか。
仏像販売店では、複数のポーズの烏枢沙摩明王が見られます。
〈仏像彫刻原田〉
特注の仏像販売・仏像彫刻の専門店の仏像彫刻原田 » 烏枢沙摩明王像 (butuzo.jp)
足元の悪神
烏枢沙摩明王の足元には、鬼神・悪神像がある場合があります。烏枢沙摩明王が片足を上げているのは、この鬼神・悪神を調伏しているためのようです。「猪頭天(いとうてん)」と「毘那夜迦(びなやか)」の場合があります。
・猪頭天……鬼神。動物のような姿の像であることが多い。縛られている。
・毘那夜迦……悪神。釈迦の説法や修行者の邪魔をしていたが、十一面観音に説得され、歓喜天(かんぎてん)となった(歓喜天は「天部」の神様)。
化身前と五大明王
烏枢沙摩明王は、不空成就如来の化身とされています。台密(たいみつ/天台宗の密教)では、五大明王のうち、金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)の代わりに烏枢沙摩明王が置かれ、不動明王の北方を守っています。また、熾盛光曼荼羅(しじょうこうまんだら)や法華曼荼羅(ほっけまんだら)などの曼荼羅では、四大明王の一尊として東北方に置かれています。
※密教の五大明王:
不動明王を中心に、東に降三世明王(ごうざんぜみょうおう)、西に大威徳明王(だいいとくみょうおう)、南に軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、北に金剛夜叉明王。それぞれ如来の化身。
トイレを浄化
炎で不浄や悪を浄化する烏枢沙摩明王のご利益は、それに沿うものが多いようです。
古くから、不浄の場所と言えばトイレでした。伝染病の温床であり、怨霊など悪しきものの出入口と考えられていたようです。不浄を浄化する烏枢沙摩明王を頼るのも納得ですね。
密教や禅宗を中心としたお寺では、トイレの前や中に烏枢沙摩明王を祀ったり、その姿が描かれたお札を貼ったりする所が多いようです。トイレの前に祀っている禅宗のお寺では、烏枢沙摩明王に手を合わせてから袈裟を外し、トイレに入るそうです。
庶民にとってもトイレの神様
トイレは皆に必要なものでしたから、庶民にも烏枢沙摩明王はトイレの神様として広がりました。お札をお寺からもらったり、配り歩いている人から手に入れたりして、トイレに貼っていました。年を重ねても自分でトイレに行ける、金運上昇などのご利益があったようです。
烏枢沙摩変成男子法
平安時代の貴族や戦国時代の武将たちには、出産前に胎内の女児を男子に変える秘法、「烏枢沙摩変成男子法(うすさまへんじょうなんしほう)」の本尊として信仰されました。貴族も武将も男子の跡継ぎを得ることがとても重要だったためです。
『平家物語』には、建礼門院(平徳子)が安徳天皇を身ごもった時に「天台座主覚快法親王、同じう参らせ給ひて、変成男子の法を修せらる。」(注①)と、この秘法を行ったことが書かれています(『平家物語』巻第三「赦文」)。
妊産婦の味方
安産や産褥の穢れの浄化も、烏枢沙摩明王の大事なご利益と言えます。前述の烏枢沙摩変成男子法も、男子に変えるだけでなく、安産も含まれていました。烏枢沙摩明王を祀るトイレを掃除で清潔にすると、安産できれいな子を授かると言われていたようですが、これは現代でも聞いたことがある話ですね。
また産褥の穢れの浄化は、産褥期(産後約6~8週間)に起こる産後うつや不眠、子宮復古不全(子宮が収縮しない)、発熱などの問題や疾患を良くしてくれるご利益です。烏枢沙摩明王は怖い顔をしていますが、妊産婦の強い味方なんですね。
その他のご利益
その他に、病気、毒蛇の被害、悪鬼の怨み祟り、枯木の精の障りにご利益があるとされています。祀っているお寺によっても異なりますが、小児夜泣きや夜尿症、滅罪など、様々なご利益があります。
いずれにしても、トイレ浄化から産後、毒蛇や枯木まで、意外と生活に密着したご利益が多くあります。烏枢沙摩明王は身分制度があった時代もない現代も、変わらず人間の生活に寄りそってくれているのですね。
烏枢沙摩明王の民間信仰
「庶民にとってもトイレの神様」の項で書いたように、烏枢沙摩明王は民間にも広く信仰されていました。ただ、一言「トイレの神様」と言っても、民間の場合はすべてが烏枢沙摩明王というわけではありません。
民間での信仰の広がりは複雑で、土地によって様々な姿・呼び方・性質の便所の神が祀られていました。全国的に広がった伝承としては、厠神(かわやがみ)は「大便を片手で受け、小便をもう片方の手で受けるので、唾を吐かれると受け止めるのが口しかないので怒る」というものがあります。
烏枢沙摩明王と厠神の信仰については、民俗学から論じた本がありますので、興味のある方はご覧になってみてください。※図書館の利用もおすすめです。
宮田登、坂本要編『新装版 仏教民俗学大系8 俗信と仏教』名著出版、2016年
313~328頁の「烏枢沙摩明王と厠神」(執筆:飯島吉晴)
〈名著出版オンラインショップ〉
仏教民俗学大系⑧俗信と仏教 – 名著出版オンラインショップ (meicho.co.jp)
〈Amazon〉
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烏枢沙摩明王を祀る寺院仏閣
烏枢沙摩明王についてわかったところで、実際にお参りしてみたいという人もいるかもしれませんね。ここでは、烏枢沙摩明王を祀っている寺院仏閣をご紹介します。不動明王など他の仏様に比べると、全国的にあまり数が多くありませんが、インターネットで検索して見つかりやすい所を掲載します。
「どのお寺も遠い」「もっと近くにないかな」という方は、地域のお寺、特に密教や禅宗のお寺で聞いてみるのも一つの手だと思います。
※公式ホームページのないお寺は、烏枢沙摩明王に関する記述があるサイトのリンク先を記載しています。
※紹介文の中の「うすさまみょうおう」の漢字の表記は、各お寺の表記に合わせています。
富山県高岡市・国宝 高岡山瑞龍寺(こくほう こうこうざんずいりゅうじ)(h3)
加賀藩3代藩主の前田利常が、先代の前田利長の菩提を弔うために建てられた曹洞宗のお寺。法堂に県指定重要文化財の烏瑟沙摩明王が祀られています。烏瑟沙摩明王の御朱印に加え、売店ではお守りや像、絵葉書やクリアファイルなども販売しています。売店のものは発送もされているようですので問い合わせてみてください。
(※山号の「高岡山」は、パンフレットなど一般には読みやすいよう「たかおかさん」としていますが、正式には「こうこうざん」とのことです。)
住所:〒933-0863 富山県高岡市関本町35 電話番号:0766-22-0179
〈国宝 高岡山瑞龍寺公式ホームページ〉
国宝高岡山瑞龍寺公式ホームページ | 国宝の七堂伽藍 (zuiryuji.jp)
静岡県袋井市・秋葉総本殿 可睡斎(あきはそうほんでん かすいさい)(h3)
1401年(応永8年)開山の曹洞宗のお寺。大東司(だいとうす)と呼ばれるトイレには、日本一大きな烏蒭沙摩明王像があります。トイレは現在でも使用可(男女兼用)。静岡県など東海地方の飲食店では、こちらのお寺の烏蒭沙摩明王のお札をトイレに貼っているところが多いそうです。
住所:〒437-0061 静岡県袋井市久能2915-1 電話番号:0538-42-2121(代)
〈秋葉総本殿 可睡斎公式ホームページ〉
秋葉総本殿 可睡斎 公式ホームページ (kasuisai.or.jp)
愛知県北名古屋市・観昌寺(かんしょうじ)(h3)
1574年(天正2年)開基の曹洞宗のお寺。明王殿に烏瑟沙摩明王が祀られています。毎年8月28日に烏瑟沙摩明王の大祭であるミョウオウサンがあります。郵送でもご祈祷した烏瑟沙摩明王のお札をお分けいただけるようなので、直接お寺に行くことが難しい方はぜひ利用してみてください。
住所:〒481-0041 愛知県北名古屋市九之坪庚申前25 電話番号:0568-48-6515
〈観昌寺 公式ホームページ〉
観昌寺 – 名古屋近郊の寺院。定期坐禅会。うすさま明王。個人墓地・永代供養合同墓あり。 (kanshouji.jp)
静岡県伊豆市・明徳寺(みょうとくじ)(h3)
1391年(明徳2年)開基の曹洞宗のお寺。下半身の病気にご利益があると言われています。便所をまたいで祈る「おまたぎ」、男女の下半身を象徴するご神体をなでて祈る「おさすり」という、珍しい参拝方法。毎年8月29日には、伊豆三大奇祭の一つである「東司まつり」があります。
住所:〒410-3205 静岡県伊豆市市山234 電話番号:0558-85-0144
<伊豆市観光情報サイト>
伊豆市 観光情報 特設サイト (city.izu.shizuoka.jp)
徳島県徳島市・薬王山 金色院 國分寺(やくおうざん こんじきいん こくぶんじ)(h3)
741年(天平13年)の聖武天皇の勅令により全国に建てられた国分寺・国分尼寺の一つ。四国八十八ヶ所の第15番札所で、阿波の国分寺と呼ばれている曹洞宗のお寺です。安土桃山時代の「天正の兵火」で唯一残ったのが烏瑟沙摩明王堂で、尊像は弘法大師空海作と言われています。
住所:〒779-3126 徳島県徳島市国府町矢野718-1 電話番号:088-642-0525
〈四国巡拝センター〉
四国巡拝センター | 四国八十八ヶ所 | 霊場ガイド | 徳島県(阿波) | 第十五番札所 国分寺(こくぶんじ) (junpai-center.net)
お参りの際の注意点
烏枢沙摩明王に限ったことではありませんが、お寺に祀られていると言っても、仏像を直接拝める場合と、厨子などの中に入って直接拝顔できない場合とがあります。普段は見られないけど期間限定でご開帳している、という場合もあります。仏像を直接拝みたいという方は、ホームページや電話で事前に確認して行くのが安心です。
烏枢沙摩明王との関わり
烏枢沙摩明王との関わり方の一例として、筆者(以下、私)の経験を紹介します。また、トイレ掃除をして金運上昇したいという方も多いかもしれませんので、トイレ掃除についてはスピリチュアリストの江原啓之さんの言葉をお借りしました。
日常への取り入れ方など、何かの参考になれば幸いです。
烏枢沙摩明王との出会い
私が烏枢沙摩明王を知ったのは、尼僧漫画家である悟東あすか先生の『幸せを呼ぶ仏像めぐり 〈仏さま、神さま〉キャラクター帳』(二見書房/2011年)という本です。仏様について知りたいなと思っていた頃、書店で巡りあいました。漫画と文章とイラストで、各仏様のことが非常に分かりやすく書かれてあります。しかも裏表紙は烏枢沙摩明王のページが載ってあります!
烏枢沙摩明王のみならず、いろいろな仏様を知りたいという方はぜひ読んでみてください。おすすめです。
悟東あすか『幸せを呼ぶ仏像めぐり 〈仏さま、神さま〉キャラクター帳』二見書房、2011年
〈Amazon〉
幸せを呼ぶ仏像めぐり | 悟東 あすか |本 | 通販 | Amazon
トイレ掃除、テーブル拭きの際に
前書で烏枢沙摩明王のことを知った私は、トイレ掃除の際に、「オン クロダノウ ウンジャク」と真言を唱えながら掃除するようになりました。本には、真言を唱えながら掃除することによって掃除する人自身も浄化され、「人は環境も自分も浄化されていくと自ずと開運されていくようです。」(注②)とあったので、それを願ってでした。
やってみるともう唱えることが当たり前になり、今はテーブルを拭く時にも唱えています。朝に真言を唱えながらテーブルを拭くと気持ちがスッキリし、一日気持ちよく、そのテーブルでご飯を食べたり作業をしたりすることができます。
江原啓之さんの言葉
トイレ掃除については、スピリチュアリストの江原啓之さんが著書でこのようにおっしゃっています。
『「トイレには神様がいる」「トイレを掃除すると金運がアップする」など、トイレには人の心を戒めるための言い伝えが数多く存在しますが、大変素晴らしいことだと思います。
人の嫌がることを率先して行うという精神を育むことが徳を積むことに繋がり、因果の法則によって人生が好転するというスピリチュアリズムの真理でもあるのです。
トイレは汚れやすい場所ですが、人の生理現象を避けていては子育ても介護もできません。』(注③)
トイレ掃除で穢れへの苦手意識をなくすことは、人間として成長することにつながるのかもしれませんね。成長すると、知っていること・できることが増え、世の中や人々へ貢献できることが増えますから、それで収入が増えるという自然な流れなのかもしれません。
祖父母の家のお札
烏枢沙摩明王を知ってから、思い出したことがありました。祖父母の家のトイレに、お札が貼られていたことです。子どもの頃は何のお札か分からず、たいして気にもしませんでしたが、確かめてみると、やはり烏枢沙摩明王のお札でした。竈の神とされる三宝荒神(さんぽうこうじん)のお札と一緒に、配り歩いている人から渡されたそうです(有料か無料かは聞きませんでしたが)。昔はそうやってお札を配る風習があったようです。
お寺でお札を受ける
下の写真は、お正月に行ったお寺で受けた(買った)、烏枢沙摩明王のお札(シール式)です。四国のお寺なのですが、こちらでは烏枢沙摩明王は祀られていません。ですが、三宝荒神や水天のお札と一緒に売られていました。このように、寺内に仏像がなくてもお札だけ売ってあったり、一年の始めに新しいお札を受けるためお正月だけ販売したりしている場合もあるようです。ですので、お札が欲しいという方はお近くのお寺で聞いてみるのも良いかもしれません。
最後に
烏枢沙摩明王は、意外と生活に密着した仏様でした。健康やお金は一生のことですし、出産は本来命がけの行為ですから、人生に寄りそってくれる仏様とも言えますね。
それぞれの願いに合わせて、ぜひ烏枢沙摩明王を身近に感じてみてください。どの程度関わるかは個人の自由です。直接参拝するも良し、お札だけもらうも良し、真言だけ唱えて掃除するも良しです。仏様への礼儀だけ忘れなければ大丈夫です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(筆者)
石山はるな:芸大卒ライター。神仏にお力添えいただきながら、日々精進しています。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
【参考文献】
・瓜生中『日本の仏様解剖図鑑』エクスナレッジ、2020年
・保坂俊司監修『史上最強 図解 仏教入門』ナツメ社、2010年
・田中義恭、星山晋也編『目でみる仏像 完全普及版』東京美術、2000年
・山折哲雄監修『キャラ絵で学ぶ!仏教図鑑』すばる舎、2019年
・大法輪閣編集部編『やさしい仏教 仏教なぜなぜ事典』大法輪閣、1989年
・悟東あすか『幸せを呼ぶ仏像めぐり 〈仏さま、神さま〉キャラクター帳』二見書房、2011年
・市古貞次校注・訳『完訳 日本の古典 第四十二巻 平家物語(一)』小学館、1983年
・宮田登、坂本要編『新装版 仏教民俗学大系8 俗信と仏教』名著出版、2016年
・江原啓之『自分の家をパワースポットに変える 最強のルール46』小学館、2015年
・小峰智行『梵字字典』東京堂出版、2018年
・橋本秀範監修『梵字のきほん 歴史から意味、読み書きまで理解を深める手引き』メイツユニバーサルコンテンツ、2022年