「学道如鑽火」(がくどうは ひをきるがごとし)の意味:いかに継続していくのか。忍耐、工夫、準備を示す禅語
読み方は?意味は?
学道(がくどう)は火を鑽(き)るが如(ごと)し、と読みます。
出典と意味
禅僧夢想疎石の言葉です。
弟子に向かっての励ましの言葉で、学道は学問の道ということではなく広く一般に修行の道と捉えます。火を鑽(き)るは火起こしという例えで、禅語らしく具体的な例えになっています。
意味は、「物事は火を起こすようになかなか思うようにいかないけれども、くじけずに頑張れ」です。
火起こしを実践的に考えてみる
この言葉を理解するには、まず火起こしの大変さを理解しなければなりません。ライターもマッチ、コンロもない状態での火起こしは簡単ではなく、木と木の摩擦で小さな熱を持った木粉を少しずつ大きくしていなかなければなりません。これがなかなかの一大事です。
実際に火起こしに挑戦した様子からその大変さを見てみましょう。https://www.youtube.com/watch?v=-k_w0v0AOfI&t=2s
まず煙すら立たない
ひたすら摩擦しつづけるしかない
煙が出てきてもすぐに消えてしまう、けど心が折れたりしない
摩擦しやすい環境を整えつつ続ける
立ち消えになってもやり直す。何度でもやり直す
実際、多くの人がこの火起こしに挑戦しているようですが、ほぼ挫折しているようです。この人たちも数か月がかりのチャレンジでした。継続しないことが失敗であり、成功の鍵はただ続けること、というのがよく分かる動画です。ノウハウは継続しながら得られるものだと思います。
【参考】うまくいかないプロセスを重視する禅語「工夫」はこちらから
徐々に火を大きくしていく。急いではいけない
さあ、続けましょう。
徐々に火を大きくしていく。急いではいけない
そうしてやっと火がつく。
火はあくまで道具。いかに使いこなすか。便利にして危険なもの。
ようやく火がつきました。火をつける大変さ、このくらい学道の道は厳しいから、この苦労を胸に刻んで継続せよというのが、学道如鑽火です
【参考】意味の近しい禅語「地肥茄子大(ちこえて なすだいなり)」はこちらから
例えをひも解く
このように、実際に火起こしの様子をみているとその大変さが分かります。この例えを私たちの勉強や仕事、何かの困難への取組みに置き換えると
- まずとっかかりさえ掴むことさえできない(ほとんどの人はここで諦めてしまう)
- ひたすら継続するしかない
- 継続できる環境を同時並行で整えていく
- 結果は出ないが諦めない
- ぬか喜びを続くけれども、都度工夫して再チャレンジ
- 少しできるようになっても油断しない
- 次になるをするか考えながらだんだん成長していく
- ようやく一定の成果に達する。でもこの成果は何かの手段。これをどう役立てるかが重要。マイナスの働きをすることもある。
といったかたちで、いわゆる「継続は力なり」を具象的に示してくれるのでイメージしやすく、同じ意味でも励ます力が大きい言葉です。
何か資格を取ろうと決意したとして
ただ継続するといっても続けることは難しいので、その困難を示してくれているので、この言葉で乗り越える力が増します。例えば、何か資格を取ろうと決意したとして、しかし勉強してみると継続の困難に常に突き当たります。
- まったく分からない
- 楽しくもないが継続するしかない
- 続けやすくないように勉強机を買ったり、図書館に通う日課を作ったりする
- 模試を受けてもまったくダメ
- 少し分かってきたけど、模試の結果は一進一退。改善しながら頑張る
- 手ごたえが得られてきたけど、遊びに行かない。今さぼるとまた元に戻る。
- 次に読む参考書、課題を段取りしておいてステップアップしていく
- 資格が得られた。でも資格取得は手段であってもこれを得て何をするかが重要。
しかし、事を成就させるには、火起こしのような忍耐が必要です。
実際、努力に対して成果は期待するほど伸びていかないから
この図のように、努力の継続に対して、成果は比例して伸びていきません。この過程で多くが脱落します。継続して成功するか、途中で辞めて失敗するか、それはあなた次第です。
【参考】何事も自分次第とする「自業自得」の解説はこちらから
まとめ
努力に対して結果はずっと後ろ倒しでついてきますから、火起こしのイメージで、工夫しながら継続していきましょう。簡単には火はつきません。しかし、火のある生活は、ない生活とは比べものになりません。結果が出るまで続けるという覚悟も必要です。以上、禅語による「継続は力なり」でした。
監修者:「日常実践の禅」編集部
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
参考文献:「一行物」(芳賀幸四郎、淡交社)
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