大道無門の意味「悟りの道にはどこからでも入れる」
(だいどうむもん)
大道無門(だいどうむもん)は、「禅の悟りの境地を意味する大道には特に入口がなく、だれでもいつでもどこでも入れるよ」という意味です。
禅問答をまとめた禅書「無関門」の序文を飾る非常に重要な言葉です。
特定の団体、教書によらずとも、年齢・性別などのバックグラウンドにも関係なく、道は開かれているというオープンマインドな言葉です。
それでは詳細を確認していきましょう。
読み方
「だいどうむもん」と音読みするのが通常です。
「おおいなるみちにもんなし」「だいどうにもんなし」と訓読みしても構いません。
出典
南宋時代の禅僧無門慧開の著書『無門関』の序にあります。
『無門関』は48則の禅問答(公案)をまとめた禅書で、有名な禅語が多数収録されています。
無門関にある有名な考案
- 趙州狗子
- 百丈野狐
- 南泉斬猫
- 洞山三斤
- 平常是道
- 即心即仏
- 非心非仏
- 竿頭進歩
無門づくし
こういった有名な禅問答からなる著作の序文にあるのがこの大道無門です。
無門禅師の無門関における大道無門ですから無門づくし、この語の重要性が分かってきます。
ちなみに門と関はほとんど同じ意味です。
英語では「The Gateless Gate」と訳されたりします。
何となく大道無門の意味も、何となく掴めてきますね。
禅語の出典経路
禅語の出典にはいくつかのパターンがありますが、大道無門は正当な禅の教本に由来する生粋の禅語といえます。
- 禅書に由来するもの
- 詩句から取り出したもの
- 故事成語から取り出したもの
そのため、禅語に時に生じる多義性(意味がいろいろ考えられる)といったことがほとんどありません。
原文
(読み下し文)
大道に門無し
千差の路有り
此の関を透得せば
乾坤を独歩せん
(意味)
大いなる道にはここから入るというような門はない
たくさんの道とつながっている
しかしこれが難関なのだけれども、
通過すれば、天地を自在に闊歩できる
意味
ここでいう道とは「禅の境地」と捉えてください。
剣道・茶道・書道・柔道・華道と同じ道です。
しかし、これらの道のように道がないとこの語は言っています。
入門というものもないということです。
すなわち大道無門とは、禅の境地はどこにでもあるということになります。
悟りの道は広く開放されている
仏教では「あらゆるものに仏性を見出す」(山川草木悉皆成仏)と考えますから、その悟りに特別な入口はないと考えます。
ここでいう門とは、特定の場所や建物・特定の集団・特定の経典・特定の礼拝や寄付・特定の人物のことであり、そうしたものは特に唯一の悟りへの経路ではないよという意味になります。
「無門を法門とする」ということです。
POINT
1.どこでもいい ⇒ ココでもいい
門がないということは、突き詰めるとどこでもOKということになります。
実際、「自分のいるココ」がその地であるということを、禅は言葉を変えて何度も教えてくれています。
2.だれでもいい ⇒ 私でいい
門も関所もないということは、当然門番も関所の番人もいません。
資格試験もありませんから、誰でもOKということになります。
つまり禅とは、いわゆるのユニバーサルアクセスということです。
3.いつでもいい ⇒ 今でもいい
門がないので、開閉時間もありません。
長らくの修行期間も要らないということです。
コンビニよりも便利です。
【参考】“今”に集中すべきという禅語はこちらから
その他の使われ方
度量の大きいさま
「大道に門なし」を、どんなもので引き受けると捉えて度量の大きいさまという意味で使うことがあります。
豪放磊落といった四字熟語と近しい意味合いで用いることがあるようです。
豪放磊落(ごうほうらいらく)
気持ちが大きく快活で、小さなことにこだわらないこと。また、そのさま。
度量が大きく快活で、些細なことにこだわらないこと。
『 新明解四字熟語辞典』
「こだわらない」という境地は、特に風という言葉で表現される禅の境地にもつながり、出自の意味からは少しずれますが、これはこれでよろしいことと思います。
【参考】さっぱりとした心持ちを表わす禅語はこちらから
お酒の名前
岡山県にある宮下酒造さんの麦焼酎の名前です。
もちろん禅語が先で、宮下酒造さんがそれにちなんで命名したものです。
「麦の風味がしっかりとしており、後味がすっきりで飲みやすいのが特長」だそうです。
禅語にちなんだお酒では「上善如水」「而今」などもありますね。
まとめ
以上、禅語「大道無門」の意味を確認してきました。
禅の開かれた考え方は実に明快に示された言葉と言えます。
「門」という具体的な例えを持ち出すあたりも、禅語の具象表現の特長そのものです。
著名な禅書『無関門』の冒頭に掲げられた言葉として、大切に胸に刻んでいただけると幸いです。
お読みいただき、ありがとうございました。
引用・参考文献:
画像の一部:
- 「pixabay」
監修者:「日常実践の禅」編集部