没底籃児盛白月(もっていのらんじにびゃくげつをもる)
美しい月をかごに入れて持って帰ろう!?
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没底籃児の部分が常用の熟語でなく、理解が難しい禅語です。
単語の意味を理解し、禅の文脈を押さえれば、理解できるかと思います。
その上で納得できるかどうかは、ご自身の禅の体得の度合いによることになります。
出典
禅の公案などをまとめた中世の中国の書に記述があります。
禅林類聚(ぜんりんるいじゅう)
没底籃児盛白月
無心椀子貯清風
書き下し文
没底(もってい)の籃児(らんじ)に白月(びゃくげつ)を盛り、
無心の椀子(わんす)に清風を貯(たくわ)う。
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意味
底抜けのかごに白月に入れ、
無心のお椀に清風を入れる。
解説
「月」は禅の文脈では悟りの例えとして用いられます。
底のないかごは、モノを入れて運ぶことができませんから、用を果たせません。
禅では当たり前のことを受け入れるを促すとともに、ときに当たり前を疑うことを求めてきます。
ストーリー
美しい月が夜空に上りました。
近くの公園に月見の散歩に出かけています。
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またの日にも満月は上りますが、今日の夜空は今日限りです。
今日の満月を持って帰りたくなってきました。
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月は手に取れませんし、手元のかごに入れても持って帰ることはどうにもできそうにありません。
月は手に取れませんし、手元のかごに入れても持って帰ることはどうにもできそうにありません。
底のないかごだったらどうでしょうか。
かごの中に月が収まりました。
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想像を超えた発想で、月を持って帰ることができました。
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ここでは常識的には考えられない「底のないかご」を使って、月という悟りを得ると言っています。
すなわち、悟りへの道において、常識を超えた見識が求められるということです。
対句について
無心椀子貯清風も禅味に富んだ言葉で、両方合わせることで味わいも深まります。
こちらについては別の機会に解説します。
1句・2句を短く省略した言葉が用いられることもあります。
月白風清(つきしろく かぜきよし)
白月清風(びゃくげつせいふう)
白月清風がこの出典からは正しい語順ということになりますが、月白風清の方が用いられることが多いかと思います。
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漢語としては「月白く風清し」と読める後者も間違いではなく、日本語の語感としては捉えやすい語順です。
漢語としては「月白く風清し」と読める後者も間違いではなく、日本語の語感としては捉えやすい語順です。
類義語・対義語
同じ意味の禅語と、反対の意味の禅語をみてみましょう。
同じ意味の言葉
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常識を超えた世界観を示す月を用いた禅語は他にもあります。
月に限らなければ、さらにいろいろな言葉で、禅は枠にはまらない体感的な境地を示しています。
- 釣月耕雲(ちょうげつこううん)
- 東山水上行(とうざんすいじょうこう)
- 鉢盂裏走馬 (どんぶりのなかで馬を走らせる)
- 小魚呑大魚 (小魚が大魚を飲み込む)
- 滝直下三千丈(たきちょっかさんぜんじょう)
- 一口吸尽西江水(ひとくににすいつくす せいこうのみず)
- 半升鐺内煮山川 (小鍋で山や川を煮る)
- 一粒粟中蔵世界(一粒の粟に世界がある)
- 毛呑巨海芥納須弥 (毛が大海を飲み込み、小粒が大山を収める)
逆の意味の言葉
常識を超えた世界観を示す月を用いた禅語は他にもあります。
月に限らなければ、さらにいろいろな言葉で、禅は枠にはまらない体感的な境地を示しています。
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- 柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)
- 桃紅李白(ももはくれない すももはしろ)
- 眼横鼻直(がんのうびちょく)
- 松曲竹直(まつはまがれり たけはなおし)
- 山是山水是水(やまはこれやま みずはこれみず)
- 月在青天水在瓶(つきはせいてんにあってみずはへいにあり)
- 鳶飛戻天魚躍于淵(とびとんでてんにいたり うおふちにおどる)
- 鶏寒上樹鴨寒下水(とりさむくしてきにのぼり かもさむくしてみずにくだる)
まとめ
言葉としては理解できましたが、奇異な情景を心の底から納得して体得するには、禅の実践が必要です。
禅ではいろいろな方法が提示されていますから、ぜひお試しいただければと思います。
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