福寿海無量の意味「幸せの集まった無限の海」
掛け軸で用いられる幸せの言葉
(ふくじゅかいむりょう)
「福寿海無量」は、掛け軸や書道、茶道などでよく用いられる非常に人気のある言葉です。
観音経というやさしいお経のなかでも、分かりやいハイライトとなるフレーズのため、よく使われています。
読み方
福寿海無量は「ふくじゅかいむりょう」と読みます。
元々は「福聚海無量」と書きますが、この場合も読み方は同じく「ふくじゅかいむりょう」です。
出典
出典は『観音経』です。
観音経は法華経のなかの「観世音菩薩普門品第25」の部分を指します。
原文(読み方とともに)
観世音浄聖(かんぜーおんじょうしょう)
於苦悩死厄(おーくーのうしーやく)
能為作依怙(のういーさーえーこー)
具一切功徳(ぐーいっさいくーどく)
慈眼視衆生(じーげんじーしゅーじょう)
福聚海無量(ふくじゅーかいむーりょう)
是故応頂礼(ぜーこーおーちょうらい)
(意味)
観世音菩薩という清浄な菩薩は
苦しみと、死の恐怖とにおいて
必ずあなたにとって拠り所となるでしょう。
観世音菩薩は、あらゆる修行の成果を完成して備えて
慈しみの眼差しで以って迷える人々を見守っています。
悟りの福分は海のように集まって無限です。
ゆえに観世音菩薩の御足を我が頭頂にいただくよう礼拝すべきと、仏陀は言われた
観世音菩薩普門品偈
意味:福寿の意味がポイント
福寿で幸福としてもよいですが、原典の言葉「福聚」を取るとさらに分かりやすいです。
聚
音読み:シュウ・ ジュ
訓読み あつまる・ あつめる
このように聚の意味は集まるですから、福聚海は、福が集まった海ということになります。
福寿海無量の意味
無量は無限に広がっているさまを意味しますから、
福聚海無量は幸せの集まった海が無限に広がっている様子ということになります。
福寿海無量の場合も同様です。
慈眼視衆生とともに
前節の「慈眼視衆生」とともに対句として一緒に用いられることがよくあります。
こちらも穏やかな気持ちにさせてくれるハッピーな言葉として、単独でもしばしば用いられます。
「慈眼視衆生」とは「慈しみの目で社会を見よう」という意味です。
「福寿」
「福寿」ではお酒の名前にもなっています。
お酒の名前になっている仏教由来の言葉は他にもあります。
禅が捉える福寿海無量
禅では幸福は今自分がいる場所に広がっていると考えます。
この考え方は禅の最も重要な考え方の一つです。
従って、福寿の海は遠いどこかにあるのではなく、今自分がいる場所がそうであるということになります。
禅問答にしてみる
幸せいっぱいが海のように広がっているというのは、遠い世界の果てにあるのではないというところがこの語のポイントです。
禅問答にしてみると、こんな感じです。
幸せいっぱいが海、それはどこにあるのか?
はい、私の目の前にあります。
結果的に世界の果てにも幸せは広がっているのですが、今、目の前にあるというところが禅の考え方としては重要です。
禅問答に挑戦する
多くの禅語は禅問答に由来しています。
興味のある方は挑戦してみてください。
類語から理解を深める
福寿海無量には、「今あなたの目の前に幸せが広がっているじゃないか!」という意味合いがあることを見てきました。
- 遍界不曽蔵(へんかいかつてかくさず)
- 清光無何処(せいこういずこにかなからん)
- 在眼前(がんぜんにあり)
こういう教えをしてくる禅語は他にもいくつもあります。
同じ意味合いでも、いろいろな言い方をしていることに触れることで理解が深まることと思います。
遍界不曽蔵(へんかいかつてかくさず)
世界において、大切なものは一切何も隠していないぞ!という意味です。
何を隠していないのでしょうか。
あなたの幸せの元、大切なこと、宇宙の真理、これらは一切そのまま目の前にあるぞと禅は教えてくれています。
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清光無何処(せいこういずこにかなからん)
清き光とは一体どこにあるのか!?という問いです。
答えはもちろん、「私の目の前に、そして世界中いたるところにあります」ということになります。
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在眼前(がんぜんにあり)
意味は、もちろん「目の前にあるぞ」です。
何が目の前にあるでしょうか。もうお分かりですね。
あなたの幸せは目の前にあるぞ、と言っています。
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実践を考える
- 誰にも学ばない
- ただ座禅をする
- 日常生活を全うする
どうやって自分のいる場所を幸せで溢れかえらせることができるのか、考えていきましょう。
⓵ 誰にも学ばない
禅では特別な方法はなく、誰かにその方法を聞くことも正しくないと考えます。
何かの本に書いてあることでもないと考えます。
何を学ばなくても、無限のハッピーの大海原にあなたはいます。
言葉の海で遭難しないでください。
② ただ座禅をする
ただ、静かに心を落ち着けることが求められます。
そして、静かに座禅をすることを勧めます。
最もカンタンに心の平和を得る方法が、座禅だからです。
あなたの周辺にたくさんある幸せに気が付く時間になるはずです。
③ 日常生活を全うする
当たり前の生活を全力で行います。
なぜなら、あなたの目の前にはすでに幸せの海が広がっているからです。
(日常生活を一つずつこなしていこうという禅語はこちらから)
今日、あなたには何の特別な活動は必要ないということです。
日常生活のなかから始める
自宅を片付けることから始めるのも1つの方法です。
自分の身の周りを、幸せが溢れる理想の地に変えていきましょう。
まとめ
福が無限に広がっている海ですから、途方もない幸せです。
それが目の前に拡がっているのだよというありがたい言葉です。
今日も良き日をお過ごしください。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
引用・参考文献:
・「観世音菩薩普門品偈」(安住寺)
・「一行物」(芳賀幸四郎、淡交社)
・「聚」(goo辞書)
画像の一部:
・「pixabay」
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もっと短い禅語
禅語では「海」を用いたものが少なく、この福寿海無量も観音経が出典ということで例外的な存在です。
禅では海よりも山を用いることが圧倒的に多いです。
禅語を漢字一字から考察した記事はこちらをご覧ください。
- 「一」:一とは自分自身のこと
- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
- 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
- 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
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