桂花露香の意味「木犀は花だけでなく露も香るようだ」
細部にも表れるその人の精神性や魅力を示す座右の銘で使える禅語
(けいかはつゆもかんばし)
「桂花露香」(けいかはつゆもかんばし)は、秋の情緒を示す言葉です。
禅語としては「細部にも表れるその人の精神性や魅力」のことを意味します。
それでは、内容を見ていきましょう。
読み方
「桂花露香」は、「けいかつゆもかんばし」と読みます。
少し格好をつけた読み方ですので、平易に読むなら「桂花の露が香る」と読んでも構いません。
桂花とは木犀のこと
桂は桂(かつら)ではなく、木犀のことです。
木犀は中国原産で中国では桂花といいます。
出典
仏教の原典がある言葉ではなく、抒情詩から禅的な意味を導出した言葉として用いられています。
『禅林句集』などに収録されています。
原文
桂花露香(けいか つゆもかんばし)
意味
水草が秋風に吹かれて水面を揺れて涼しげだ。
木犀の花の香りが漂い、その朝露も香っているように思える。
解説
そのまま、「木犀はその露まで香る」というのが直接的な意味になります。
少し文脈を持たせると、こういったところになります。
秋になって今年も木犀の花が咲いた。
木犀の香りはまさに秋の香りだ。
朝、葉に露を携えた木犀をみるに、
美しく光る朝露からも香りがしてくるように感じられる。
木犀は香りを楽しむ花
香りがするので、桜の見た目に対して、香りを楽しんだり、歌われることが多いのが木犀です。
「桂花露香」はまさに、木犀の香りにちなんだ禅語です。
「桂花露香」の季節は秋
木犀は常緑で9-10月の1週間だけ開花します。
開花時期の短さでは桜と似ています。
使い方としては、そのまま秋の情緒を歌った一言として用いてもよいです。
木犀の風流
木犀は目で楽しむだけでなく、鼻で香りを楽しむものだという風流の感を込めて使うことになります。
秋のひんやりとした風情が感じられる言葉です。
書道にあっても茶道にあってもこの使い方が直線的で分かりやすくてよいかと思います。
禅語としての桂花露香
禅語で用いる文脈は、もう少し複雑です。
「そのものでない部分にもその魅力が現れる」、いわゆる霊感は細部に宿るというような意味合いで用いることになります。
魅力を身にまとう
木犀は花が香るのですが、露もその香りを発しているかのように感じられるように、人もその周辺や細かい所作にその人格が現れることがあります。
木犀のように、細かい部分で魅力が発せられるといいですね、という意味合いで用いられることになります。
立ち現れる本質
例えば、人格者はほんの一言や相槌にもその優しさや厳しさが現れるものです。
達人の所作は、ほんの立ち姿や歩くさまにも隙がなく、無駄もなく、理に適っていて美しさが感じられます。
木犀についた露は、木犀とは関係のないものですが、しかし木犀の一部として輝きを持っていることを謳っているということになります。
その人の本業でない部分、突発的な出来事、困難や災いに際して、それをわが物として自分の一部として包括して昇華させるできる人のことを謳っていると解釈することができます。
禅語として用いた場合の例文3点
- 茶席を設けるにあたっては、桂花露香の心で細部にまで気を配るべきだ
- 先生は何につけても常に前向きで、その言葉にはいつも励まされる。まさに桂花露香といったところだ。
- 途中ハプニングもあったが、あの人は桂花露香のごとしで、まったく慌てる様子もなく対応し、むしろ楽しんでいるかのようだった
臭みと香り
木犀に相当する露は、人間におけるその所作や言葉、対応であり、その香りとはその人間性のようなものであることをみてきました。
木犀の露がそうであるように、その人が意識的でない瞬間に人間の本質は発露するのかもしれません。
禅の考える臭み
禅の文脈では、香りと反対に臭みという言葉もよく登場します。
- 人の目を気にしたような動作
- わざとらしい感じ
- あざとい仕草
そのものの美しさ
禅では、ありままの美しさを讃えることがよくあります。
済其美(そのびをなす)の解説はこちらから
禅の考える香り
逆に真剣に取り組んでいるときの眼差しや、困難にあって人を思いやる心、瞬間的に人をかばう様子には香りを感じます。
日常の心持ちが自然と現れてしまうのだと思います。
ふとした瞬間
- 全力で何かをしているとき
- 困難に対峙したとき
- 瞬間的に対応するとき
力を全うし、その汗もカッコよく感じるスポーツ選手のようなイメージ、私たちもそのようにZen力で生きたいものです。
木犀の花はほんの1週間、香りはさりげないものです。 人の本質もそのような瞬間的でさりげないものなのかもしれません。
そのものらしさを大切にする禅語「柳緑花紅」の解説はこちらから
「花」を用いた禅語
「花」は禅語では度々用いられます。
基本的には「人の生き方」になぞらえたものがほとんどです。
文脈によって色々な生き方を教えてくれますので、それぞれ楽しんでいただければと思います。
- 花看半開(はなは はんかいをみる)
- 百花為誰開(ひゃっか たがためにひらく)
- 落花随流水(らっか りゅうすいにしたがう)
- 梅花和雪香 (ばいかゆきにわしてかんばし)
- 花知鳥待花(はなとりをしり とりはなをまつ)
- 三冬枯木花(さんとう こぼくのはな)
まとめ
以上、秋の風情を楽しむ語としても、人生をよりよく生きる言葉としても解釈できる「桂花露香」をみてきました。
皆さまの参考になれば幸いです。
今日も良き日をお過ごしください。
引用・参考文献:
・『一行物』(芳賀幸四郎、淡交社)
・『禅林句集』
画像の一部:
・「pixabay」
・「GIPHY」
おまけ:桂花露香を英語にしてみる
木犀がそもそもosmanthusでよいか、分かりません。
露は朝露にして詩的にしましたが、漢文調の英訳というのを日本語の語感でやると1番目になりますがどうでしょうか。
looksを使って香りをぼやかしています。
- Osmanthus, morning dew looks fragrant
- Smell of morning dew on osmanthus
- On osmanthus, morning dew is also fragrant
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禅語は基本的に短いものが多く、しかしながら意味が深いのが特徴です。
突き詰めると、たった一字でも味わい深い意味が生じるのが禅の世界です。
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- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
- 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
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- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
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