雲悠々水潺々(くもゆうゆう みずせんせん)
酷暑にあっても心地よい涼しさを与えてくれる禅語
「潺」は「せん」と読みます。
「水」も少し特殊な意味を持ちます。
まずは言葉の意味から確認していきます。
雲悠々
「雲」
雲は禅の文脈では悟りを遮るものとして、山や月を隠す存在として用いられることがあります。
しかしここでの雲はそうした存在ではなく、自由自在でありながら、計らないのないものとして用いられています。
「悠々」
はるかに遠いさま、限りなく続くさまのことを示す擬態語です。
また、余裕を持ち、慌てたり気を揉んだりすることなく、落ち着いて物事を行うさまを示す言葉でもあります。
水潺々(せんせん)
「水」
水は、川や湖を指す言葉として禅語では登場することが多いです。
ここでもコップの水ではなく、川の水のことを言っています。
次にみるように流れている様子を表しているため、湖というよりは川ということになります。
「潺々」
浅い川の水がさらさらと流れるさまを示す言葉です。
大河ではなく、小川のイメージです。
壮大な雲がゆったりと流れるさまと、小さま川がサラサラ流れる様子が大小のコントラストがあり、遠近感も相まって、小川のかわいらしい情景が目に浮かびます。
解説:夏の禅語として
大きな雲が空に浮かび、小川の流れに涼を感じる夏にふさわしい禅語です。
汗だくの猛暑にあって、雲の雄大さととともに小川の静かなせせらぎの音が聞こえてきて、一気に心地よい涼の世界へ連れていってくる言葉です。
涼し気な心持ち
禅の目指す心持ちとして「涼しげ」であることは大事で、ごちゃごちゃ色々考えたり、右往左往していない、泰然自若の境地が大切とされます。
寒さを謳う冬の禅語とは異なる、夏に感じる涼しさを感じる情景に、禅者のあるべき精神を見出そうという禅語です。
禅には本来は季節はなく、高度に精神的な世界ですが、禅語ではこうした季節の情景に高度な精神世界へのヒントを提示しようというものが少なりありません。
抒情にとどまらず、体感せよ
禅ではさらに進めて体感を重視します。
したがって、雄大な雲と小川の流れという情景においては、先立って猛暑の息苦しさを感じます。
次に雲を流す風の肌触りや小川の流れる音を想起して、そこに禅の「涼し気な境地」を頭でなく体で感じるようにします。
実際にそのような場所に立つのが最も良いです。
そうして日常生活の慌ただしいタスクや町の喧騒、人間関係の軋轢などの暑苦しい環境に対して、そのような状況にあっても精神的に実現できる理想的な心持ちを体感します。
まとめ
少し読みづらい感じですので、ひらがながやカタカナで表記しても構いません。
水は日本人に直感的に理解しづらいので、川としてみましょう。
雲ゆうゆう川せんせん
情景と擬態語の語感によって、この語が私たちに涼しく生きるきっかけを与えてくれていることがよくわかるかと思います。
猛暑にあっても涼しい日々をお過ごしください。
ユウユウ、センセン。
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