乾坤只一人(けんこんただいちにん)
周囲の雑音を一切シャットアウトする言葉
強い自分、独力を大切にする禅の言葉です。
孤独は寂しいですし、自力で何とかするというのは大変なことです。
しかし、そこにこそ本当の「生」があると考える禅の醍醐味にかなり直接的な表現で迫ることです。
それでは、意味をみていきましょう。
出典
まずは出典から確認していきます。
嘉泰普灯録
僧問
如何是君
宇宙無雙日
乾坤只一人
書き下し文
僧問う
いかなるか、これ君
宇宙に双日なし
乾坤ただ一人
意味
僧は尋ねた。
あなたとは一旦何か。
宇宙に太陽は二つない。
天地にはただ自分一人しかいない。
大意
自分一人というと寂しい感じもしますが、むしろ前向きで創造的な言葉であることが、よく考えてみると分かってきます。
自分ただ一人とはどういうことか
「自分以外誰もいない。
ならば笑っていきよう。
自分以外誰もいない。
ならば人には頼れない。
自分の力で何とかしよう。
自分以外誰もいないのだから、 時間はかかってもいい。
何も焦る必要はないし、 自分を焦らせるものは何もない。
自分以外誰もいない。
だから、人からどう思われるかは考えなくていい。
自分がやりたいようにやろう。
自分が本当にやりたいことに集中しよう。
自分以外誰もいないのだから、自由。
ぜんぶ自分の責任だし(自らに由る)
悠々として自適。(自ら適える)」
禅の教え
極端な言葉のように思えますが、こうした言葉は禅や仏教でたびたび登場する最も重要な考え方の一つです。
ただ一人歩め
禅語では主人公(しゅじんこう)という言葉がありますし、釈尊の言葉としては有名な
天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)や「 犀の角のようにただ独り歩め」があります。
ただ自分を中心に、主体的に生きることが乾坤唯一人の本義ということになります。
人の話を聞くな
周囲の視線や批判はこの際無視します。
人の話は犬のクソといって退けたり(乾屎橛)、「仏にあっては仏を殺せ、親にあっては親を殺せ」(殺仏殺祖)といって周囲の助言者を嫌ったりします。
全体絶命のピンチこそチャンス
誰もいない、何もないというところまで物事をなくしてしまって、 そうすることで生まれていく創造性というのが禅の重要な原理の一つです。
絶体絶命のピンチを反転のチャンスととらえるのが禅で、 禅では逆にこの大ピンチまで自分を追い込まなければ、反転はないと考えます。
大死一番絶後再蘇、無一物中無尽蔵といった禅語もあります。
この言葉の季節
あらゆる生命力をすり減らされる冬は、まさにここでいうただ一人になっていく季節のことであり、そこから回復が始まる立春の時期、2月ごろがふさわしいかと思います。
三冬枯木花(さんとうこぼくのはな) 枯木再生花 (こぼくふたたびはなをしょうず)といった言葉もあります。
冬の終わりにポツンと咲く花一輪、乾坤唯一人と合わせて意味を確認すると、味わい深い言葉です。
ただ一人になるトレーニングとしての座禅
情報を遮断して、静かに自分以外何もなくなってしまう時間が座禅です。
自分以外誰もいないという寂しい状況に自分を置いて、 逆にそれを好機にして前向きに生きるきっかけをつかめるかもしれません。
思考実験でもありますが、禅ではそれを体験的にやるというところがポイントになります。
実際に静かな空間を用意して、ただ呼吸をしている自分だけになるのが座禅の要領です。
座禅をする
座禅は最も基本的な”禅”の実践になります。
オンラインで座禅会に参加できる時代になりました。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
日常生活で実践する
身の回りを片付ける
禅は空理空論を避け、日々の実践を志向します。
身のまわりの片付け・清掃から始めてみてください。
最も始めやすく効果の出る実践方法です。
禅問答に挑戦する
多くの禅語は禅問答に由来しています。
興味のある方は挑戦してみてください。
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おススメの禅語
あなたの日常実践を励ます禅の言葉をご紹介します。
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もっと短い禅語
禅語は基本的に短いものが多く、しかしながら意味が深いのが特徴です。
突き詰めると、たった一字でも味わい深い意味が生じるのが禅の世界です。
ぜひこちらもチェックしてみてください。
- 「一」:一とは自分自身のこと
- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
- 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
- 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
- 「喝!」:最も短いアドバイスの言葉
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