心静即身涼(こころしずかなれば すなわち みもすずし)
暑苦しい世の中を涼しげに生きる実践方法
心が静かであれば、体が涼しくなるという言葉です。
心を静かにするというのは難しいので、体をうまく使って体の涼しさを実現する方法を考えてみましょう。
出典
白居易が恒寂師(こうじゃくし)という禅僧について詠んだ詩です。
白居易
人人避暑走如狂
獨有禪師不出房
不是禅房無熱到
但能心靜即身涼
書き下し文
人人暑を避け走りて狂するが如し
独り禅師の房を出でざる有り
是れ禅房に熱の到ること無きには不ず
但だ能く心静かなれば即ち身も涼し
意味
人々は暑さを避けて走り出す
禅師は一人部屋から出ない
そこも同様に暑いことは変わりない
ただ心静かなために、身もまた涼しいのだ。
涼しげとは
涼しげな目、涼しげな顔、涼しげな表情、涼しげな人。
色々な用い方がありますが、涼しげとは「さっぱりしてさわやかな感じがするさま」なのだそうです。
涼しさというのはどこからくるのか、この語では心が静かであれば手に入れられるとしています。
涼しさ | 暑っ苦しさ |
あまり考えない | いろいろ考える |
余裕のある様子 | ひっ迫した様子 |
安心 | 不安 |
言葉が少ない | 言葉が多い |
快活 | けだるい |
不動 | 動き回る |
色々考えずに落ち着いたさまというのが見えてきます。
他の禅語をヒントにする
風や山にちなんだ禅語には、涼しさが感じられるものがいくつもあります。
風のことば
禅語のなかにはいろいろ考えないことを「風」という言葉で表すことがあります。
まさに涼しげと重なります。
・下載清風(あさいのせいふう)
・穆如清風(ぼくとしてせいふうのごとし)
・清風匝地(せいふうそうち)
山のことば
あちこち動き回らないさまを「山」に例えて座禅する姿と重ねたりもします。
山の涼しさが連想されてきます。
・青山元不動(せいざんもとふどう)
・山静如太古(やましずかなること たいこのごとし)
・独坐大雄峰(どくざだいゆうほう)
禅は身体的
禅は精神論や観念論に終始することを嫌います。
山のようにどっしりと構えて“座禅をする”となると具体的で身体的になります。
実際、恒寂師も暑い室内で平然と座禅をしていたのではないかと思います。
涼しくなる2つのこと
座禅の最中にやることは、数を数えることと良い姿勢を維持ことです。
数を数える
数を数えることは数息観(すそくかん)といって、吐いて吸って1カウントで、10または100まで数えるとまた1からやり直します。
やってみるとなかなか数えられません。
ただ、いろいろなことを考えてしまいがちになるのですが、ここでただ数を数えるというのは、まさに色々考えずに落ち着いていくことにつながります。
怒りも悲しみも乗り越える
座禅中でなくても数を数えるという作業はアンガーマネジメントの手法の1つとしても用いられます。
アンガーマネジメントとは、、人間が抱える混沌とした怒りや悲しみ、劣等感などを自分の中で整理し、その状況を客観的に見ることで、怒りなどの強い気持ちが生じても、それを適切にコントロールし、問題解決を図るというスキルのことだそうです。
まさに怒りという熱した状態を冷まして涼しさを与えてくれる方法ということになります。
正しい姿勢
また、正しい姿勢というのは、見た目に「涼しさ」が感じられます。
逆に姿勢がくずれると、暑苦しい印象になります。
涼しげとはさっぱりしてさわやかな感じがするさまでしたが、姿勢が悪いとどうしても涼しげな様子とは言えない印象になってしまいます。
スマホ首を治すと涼しくなる
頭の位置が前に出てしまうストレートネックはスマホの影響も指摘されていてスマホ首とも言われています。
正常な位置になると、見た目にも本人にとっても「涼しさ」が感じられます。
この語の季節
暑い夏にふさわしい一語です。
ただし、本来禅語には季節はなくここでの暑さは、怒りや悲しみ、劣等感、人々を駆り立てる情動、人の気持ちを散漫にさせるもの、人生を散らかすものといった一切になります。
これらを常に退け、風のよう、山のように、涼しげであれという言葉です。
禅は実践的で生活的ですから、暑い夏を精神的に涼しく過ごそうという気持ちで入っていけば、この語の本懐ということになります。
まとめ
心静かに座禅をする、が涼しげな人になる第一歩ということになりますが、座禅に限らずとも数を数えるアンガーマネジメント、正しい姿勢で気持ちよく過ごすことなど、ぜひ言葉を読むだけでなく、実践を試みていただければと思います。
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