花無心招蝶(はなむしんにして ちょうをまねく)
物事は自然と成りゆきで成就する
前向きな言葉ですが、エネルギッシュな前向きさというよりも、ごく静かな前向きさで優しく穏やかな自然な生き方を示してくれる禅語です。
出典
「花無心招蝶」は、良寛の漢詩の1句にあります。
良寛の詩ですが、元となる漢詩があって、それを元に良寛がまとめ上げたもののようです。
良寛
花無心招蝶
蝶無心尋花
花開時蝶来
蝶来時花開
吾亦不知人
人亦不知吾
不知従帝則
書き下し文
花は蝶を招くに心無く
蝶は無心にして花を尋ぬ
花開く時 蝶来たり
蝶来る時 花開く
吾も亦 人を知らず
人も亦 吾を知らず
知らずとも 帝則に従う
意味
花は無心でいながら蝶を呼ぶ
蝶は無心でいながら花を訪れる花が開くと蝶が来る
蝶が来ると花が開く私は人のことは分からない
人も私のことは分からない
分からないけれど、自然な法則のなかで生きている
解説
「花無心にして蝶を招く」ということで、花が何の計らいや意図を持たずに咲き誇り、蝶を招こうという意図もないのだけれども、結果的に蝶を招いているという様子です。
蝶は受粉の役割を果たすので、やがては文字通り実を結ぶという結果につながります。
道は自然と開けるという楽観的な言葉
意思もなく、意図もなく、
目的もなく、計画もなく、
努力もなく、苦労もなく、
不安もなく、ためらいもなく、
あせりもなく、何ともない。
ただ、自然と成るように成る。
この語の季節
花は春です。まだ寒い時期の花は梅で、蝶の舞う季節ではありませんので、もっと暖かくなった4~5月の花のイメージです。
「無」は禅が最もよく用いる文字、概念で、禅語としても
・無礙
・無著
・無難
・無事
など、いろいろな言葉で用いられます。
しかし、「無心」というのは、どういうわけかそれほど多く用いられません。
その意味で「花無心招蝶」は、貴重な「無心」の字の入った言葉と言えます。
まとめ
ボーとするような感じですが、それでよいというのが禅です。
好き嫌い、言葉、執着、学ぶこと、
どんどん捨て去っていきます。
さっぱりと、ボーと、座禅をするというのが幸せの時です。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
日常生活で実践する
身の回りを片付ける
禅は空理空論を避け、日々の実践を志向します。
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禅語は基本的に短いものが多く、しかしながら意味が深いのが特徴です。
突き詰めると、たった一字でも味わい深い意味が生じるのが禅の世界です。
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- 「一」:一とは自分自身のこと
- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
- 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
- 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
- 「喝!」:最も短いアドバイスの言葉
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