「花看半開」(はなは はんかいをみる)の意味とは:何事もほどほどに、不完全に生きる美しさ

「花看半開」は、「花は半開をみる」と読みます。

出典は菜根譚で、意味は「何事もほどほどにやるのがよい」という文脈で例えとしてこの語は用いられています。

また、別な意味として、花は満開でなく、少し開いたくらいの頃が趣きがある、という不完全なものの美を意味する言葉として用いられることもあります。

出典から意味を捉える

出典は菜根譚です。いかにも菜根譚らしい人生訓を綴った一節です。

意味は全体を読めば、一目瞭然です。

<原 文>

花看半開 酒飲微酔

此中大佳趣

若至爛漫骸醄

便成悪境矣

履盈満者 宜思之

<書き下し文>

花は半開を看み、酒は微酔に飲む。

この中に大いに佳趣あり。

もし爛漫骸醄に至いたらば、

すなわち悪境をなす。

盈満を履む者、よろしくこれを思おもうべし。

酒は少し飲むくらいがよいという話と並べて、花の半開を語っています。

つまり、「何事もほどほどに」という意味が見てとれます。

やりすぎはよくないという大人の態度が、菜根譚らしいですね。

ほどほどで満足するという意味

菜根譚における「花看半開」の意味は、全部得られなくてもいいではないか、

半分でもよいという妥協・知足の処世術を示唆するとして受け止めることができます。

いわゆる腹八分目のことであり、足るを知ることこそ知性という視点です。

物質的な不足に左右されない精神的安定です。

仏教では、満足を知らない人のことを「餓鬼」と呼んで忌み嫌うことは、よく知られていますね。

しかし、禅では、「花」の一節を取り出して、意味を拡げて解釈することがあります。

「花」を用いた禅語

「花」は禅語では度々用いられます。

基本的には「人の生き方」になぞらえたものがほとんどです。

文脈によって色々な生き方を教えてくれますので、それぞれ楽しんでいただければと思います。

「花」を用いた禅語

  1. 桂花露香(けいかはつゆもかんばし)
  2. 柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)
  3. 百花為誰開(ひゃっか たがためにひらく)
  4. 落花随流水(らっか りゅうすいにしたがう)
  5. 梅花和雪香 (ばいかゆきにわしてかんばし)
  6. 花知鳥待花(はなとりをしり とりはなをまつ)
  7. 三冬枯木花(さんとう こぼくのはな)

花看半開の別の意味

次に二つ目の意味です。不完全・不均衡の美を示す言葉として捉えることができます。

完全なものは特殊な状況でしか成立せず、むしろ不自然に見えることさえあります。

不完全の美を愛するという意味

不完全な状態は長く、そして自然と言えます。

この恒常的で自然な不完全な状態に「美」を見出す考え方は、禅でも茶道でもよく見られます。

実際、そのように考えた方が完璧主義を目指すよりも楽しいですよね。

不完全なもの:私たちを惹きつける・・・

具体的に不完全なものを具体的にみて、その魅力を考えてみましょう。

雲のかかった半月

雲一つない夜空の満月よりも、雲があった方が味わいがあるという論説は数多くあります。

・「月も雲間のなきは嫌にて候」(珠光)
・「花はさかりに、月は隈(くま)なきをのみ、見るものかは」(吉田兼好)

半開きのドア

半開きのドアには、閉まったドアにない情緒やストーリー性を感じます。

扉の向こうに誰がいるのか、とても気になります。

あるいは、逃げ出したくなる人もいるかもしれません。

いずれにしても、何か“含み”を感じさせるのは、途中段階にあるともいうべき「不完全さ」がゆえです。

非対称の茶碗

左右対称の茶碗よりも不思議と心の安らぎ・安心感を与えてくれます。

いびつなもの・ゆがんだものは、私たちがそうであるように本来の生命的なかたちなのかもしれません。

親しみや安心感が、どこからともなく感じられます。

巧拙を超えた茶碗

不完全さは均衡する

完全でないものは、あるいは完全なもの以上に、意外とバランスしているのとも考えることできます。

禅はこうした不完全さの均衡を取ろうとしているのかもしれません。

私たちも座禅においては、姿勢や心の安定を意識して座ります。

近しい言葉の紹介

花が半開きでも、そのままをよしとし、何事もそのままの魅力を大切にするという意味の禅語を幾つか紹介します。

赤洒々(しゃくしゃしゃ)

そのままの姿で穢れのない様子を示す禅語です。

ありのままを美しさと捉え、理想と考えます。

如是(にょぜ)

「かくのごとし、このとおり」という禅語。

白雲起峰頂(はくうん ほうちょうにおこる)

山に雲がかかる。作為のないさまを表した言葉です。

衒い(てらい)のない様子の魅力を謳う禅語です。

まとめ

ここまで見てきたように、花看半開には、腹八分目という抑制的な態度と不完全の美という2つの意味がありました。

これらを合わせて日常実践的な態度を考えてみましょう。

例えば、簡素枯淡」・「寡黙清貧」といった言葉で表されるような生き方が思い浮かんでくるのではないでしょうか。

例えばこんなふうに生きること

  1. 装飾の少ない室内、手作りを重視
  2. 多くを語らずに実行を重んじること
  3. 正しさを豊かさと考えること

ぜひ、あなたなりの花を半開にみる生き方を、ぜひ実践してみてください。

監修者:「日常実践の禅」編集部

日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。

画像:https://pixabay.com/

おまけ

実際に何かやってみることも考えてみましょう。

手料理、手書き文字、日曜大工、なんでも構いません。

不完全でいい、下手でいい!というのが「花看半開」です。

意外とそんな拙さのなかに、美しさがそこに現れてくるものです。

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漢字一文字のラインナップ

  1. 「一」:一とは自分自身のこと
  2. 「風」:目に見えない、とどまらないもの
  3. 「月」:禅では悟りの喩え
  4. 「夢」:一切は夢という現実
  5. 「無」:無を強調するのは禅の特長
  6. 「道」:道とはすなわち禅の道
  7. 「雪」:禅は冬の宗教
  8. 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
  9. 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
  10. 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
  11. 「山」:静寂にして不動
  12. 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
  13. 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
  14. 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
  15. 「喝!」:最も短いアドバイスの言葉
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