蛙鳴蝉噪是仏声(あめいせんそうこれぶっしょう)

本当のことはうるさいぐらいに聞こえているのに

漢字が並んでいると意味は分かりますが、読むことが難しいですからなかなか流行らない言葉ではあります。

言葉としては夏の情緒に富み、仏教的な宗教上の意味と、禅ならでは可笑しささえ感じられる視点で表現された味わい深い一言です。

それでは意味をみていきましょう。

読み方と直接的な意味

「あめい せんそう これぶっしょう」と読みます。

漢字の意味の通り、「カエルやセミの鳴き声が仏の声である」というのが直接的な意味です。

意味の近い言葉


    山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)
    雨竹風松皆説禅(うちくふうしょう みなぜんをとく)
    水鳥樹林念佛念法(すいちょうじゅりん ねんぶつねんぽう)

近しい言葉もいろいろありますが、この語にも独特の鑑賞のポイント、すなわち味わいがあります。

禅語に季節はない

本質的には禅には季節はありません。

しかし、悟りのきっかけを与えるために、分かりやすくするために季節の言葉を使ったり、日常生活や体験、五感を用いるような表現をすることがよくあります。

この語の鑑賞のポイント

蛙鳴蝉噪是仏声は、夏そして音がポイントであることは明確です。

しかも夏のカエルやセミといううるさいほどに鳴く声を仏の声としているところが面白いところです。

悟りは難しいことではない

仏の教えを悟るために、何とか仏の声を聴こうと厳しい修行をするとか、禁欲的な生活を送るとか、超人的な努力を重ねるといったことを禅は説きません。

本当に大事な教えは大変な修行の後に得るのではなく、すぐそこに、そこらじゅうにあると考えるのが禅です。

すべてが仏であるという教え

蛙鳴蝉噪是仏声も先に上げた類似する言葉も突き詰めれば、衆生本来仏、という言葉に表されます。

さらに踏み込めば、この身すなわち仏なり、という禅の本義に入っていくことになります。

2つの悟り方

漸悟(ぜんご)・頓悟(とんご)といって、悟りには2種類の考え方があります。

漸悟は徐々に悟りを得るというもの、発展段階説です。

頓悟は突然に悟るというものです。

漸悟は厳しい修行の積み重ねを経て、頓悟はあっさりと簡単に悟りを得るというところに大きな違いがあります。

禅の悟りは頓悟

禅における悟りは基本的には頓悟で考えます。

なぜなら、悟りのきっかけは、そこらじゅうにあり、それは困難なものというよりも平易なものと考えるからです。

では修行を続ける必要はないのではないかというとそうではなくて、いつでも悟れるので、油断をすればいつでも失ってしまうことになります。

あっさり型の頓悟でも継続は重視される

したがって、継続していくことは禅でも強調されます。

・正念相続(しょうねんそうぞく)
・更参三十年(さらにさんぜよさんじゅうねん)

継続が強調されるのは、その後に悟りを得るためではなく、いつでも悟れるしいつでも見失うがために、つねに悟りの境地を保つためです。

ごく当たり前の夏の風景と、高尚な悟り

悟りへと導いてくれる仏の声というと、どこか遠く天竺にでも旅をしてその後に偉大な老師にその教えを得るとか、長い座禅修行の後にある静かな夜に穏やかな仏の声が聞こえたとかそういうもののではないというのが禅の面白いところです。

うるさいほどに鳴いているカエルやセミ

騒がしいようなカエルやセミの声に、仏性が表れているというわけです。

まさに日常のなかであり、まったく平凡な夏の日の情景です。

暑い夏の日中、暑苦しく不快なまでになくセミに仏の声を見出すということです。

こころの耳をすませば聞こえてくるありがたい教え

涼しい夏の夜ではなく、寝苦しい夏の夜に大合唱を深夜まで続けるカエルたちこそ仏だと、田んぼに仏が山ほどいて、こちらが寝れないほどありがたい教えを説いてくれているというところがこの語の面白いところです。

悟りは高尚なものではない

神妙な面持ちで、神やら仏やらを説くといういかにも宗教的な態度というものを笑ってしまうような一語です。

まったくリラックスして、すっかり穏やかに、当たり前の日常に心の平静を見出していこうという考え方こそが禅ということです。

何の理屈もこねずに、ただ夏をすっかり受け入れ一体となるような境地だと思います。

ごく当たり前の忠言と捉えてもおもしろい

口をすっぱくして何度もいわれてしまうアドバイスは、なかなかありがたくも耳が痛く受け入れることが簡単でないことも多いものです。

しかしこうした忠言は、誰にとっても常識的な当たり前の助言だったりします。

真夏のカエルの大合唱やセミの鳴き声も、大自然の当たり前の営みの一部として受け入れ、それと一体になってみろという教えとしてこの語を捉えてもよいかと思います。

やかましいほどのアドバイスに真理を見出そうという姿勢です。

まとめ

いかがでしょうか。

蛙鳴蝉噪是仏声という、真夏の情緒にふさわしく、また聴覚的な体験を思い出させる特徴的な禅語でした。

禅ではそれっぽいものを退け、代わりに「そのもの」を追求します。

そのものとは、ごく当たり前のものだと禅では考えます。

その意味では日々是好日、別無工夫といった禅語が想起されます。

まったく簡単なことですが、明日にもあっさり見失うぞと戒めるのが禅でもあります。

暑い夏の日中、セミたちに大声に、

暑い夏の夜の、カエルたちの大合唱に、

ふと気づくこと、はたと思い返すきっかけを与えてくれる一語が、蛙鳴蝉噪是仏声の真意です。

今日も良き日をお過ごしください。

監修者:「日常実践の禅」編集部

日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。

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漢字一文字のラインナップ

  1. 「一」:一とは自分自身のこと
  2. 「風」:目に見えない、とどまらないもの
  3. 「月」:禅では悟りの喩え
  4. 「夢」:一切は夢という現実
  5. 「無」:無を強調するのは禅の特長
  6. 「道」:道とはすなわち禅の道
  7. 「雪」:禅は冬の宗教
  8. 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
  9. 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
  10. 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
  11. 「山」:静寂にして不動
  12. 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
  13. 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
  14. 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
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