天地与我同根 万物与我一体(天地はわれと同根、万物はわれと一体)
元々は荘子の言葉で、それを仏教が取り入れ、禅が用いるようになったという経緯があります。
出典を辿っていくことで、禅のみずみずしい感性が掴める語でもあります。
出典
元となる道教の言葉
荘子(紀元前369年頃~紀元前286年頃)の著作『荘子』に元となる言葉があります。
『荘子』斉物論
天地与我並生
而万物与我為一
書き下し文
天地我と並び生ず
而して万物と我とを一と為す
意味
天地は自分とともに生じた。
だから、すべてのものは自分と一つである。
仏教における援用
荘子の言葉が少し言葉を変えて、仏教の文脈で用いられるようになりました。
僧肇(そうじゅう、374~414年)は 鳩摩羅什(くらまじゅう)の高弟です。
『肇論』涅槃無名論
天地與我同根
萬物與我一體
書き下し文
天地は我と同根
万物は我と一体
意味
天地は自分と根は一緒である。
万物は自分と一体である。
禅の文脈への導入
『碧巌録』第四十則
「陸亘太夫與南泉語話次。陸云く
肇法師道。天地與我同根 萬物與我一體也甚奇佐
南泉指庭前花召太夫云。
時人見此株花如夢相似。」
書き下し文
陸亘太夫、南泉と語話する次 陸云く
「肇法師云く、『天地と我と同根、万物と我と一体』と
また甚だ奇怪なり」
南泉、庭前の花を指して、太夫を召して云く
「時の人、この一株(ちゅう)の花を見ること
夢の如くに相似たり」
意味
ある時、南泉と話をした時、陸亘太夫は言った
「僧肇の「涅槃無名論」によれば、「天地は自分と根は一緒である。万物は自分と一体である。」と。まったく不思議なことだ」。
南泉は、庭前の花を指して言った
「人はこの花を見て、夢のようにきれいだという」
解釈
すべてが一体であるといういわゆる万物斉同(ばんぶつせいどう)論を唱える中国土着の思想である老荘思想を仏教が取り込み、それを禅が援用しているという下りが、上記の禅問答です。
この花が自分である
南泉は多くを語っていませんが、「天地はわれと同根、万物はわれと一体」の意味とは、
「人々は花をみて美しいと言うものだが、花をみて「この花は自分である」と感じることができるかな」と言っているというのが一般的な解釈です。
「天地はわれと同根、万物はわれと一体」だけを振りかざしても、かっこよくも大仰なだから、「ほら、そこの花。どう捉える?」と言っています。
空論を避け、現実を生きる禅らしさは、「天地はわれと同根、万物はわれと一体」という考え方や言葉よりも、庭先の花を指さすというシーンにあるとも言えます。
「指庭前花」を禅語として用いてもよいかと思います。
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ひとこと
1句目と2句目はおよそ同じことを言っている。要するに世界は自分と同じで、すなわち世界は自分と一体でそのとき自分はなくなってしまう。自分がいなくなる。まったくの無である。静かであり、真っ暗である。自分は死んでしまう。面白くもないし、楽しくもない。冷たさだけが残るような感じ。暗くて冷たい世界。真っ暗闇である。
もっとダイナミックに明るい絵も描ける。指を頭上に高く掲げれば、指先から光が伸びて天が真っ白く明るく輝く。大地を強く踏み鳴らせば、土は生命力を帯びて緑が広がる。草花に虫や鳥が宿りはじめ、空に飛び立つ。自分自身が天にもなれれば、大地にもなる。虫にもなるし、鳥にもなる。風となって世界を走り抜けることもできる。静かに息を吐けば、新しい生命が世界に次々と吹きこぼれていく。歩けば美しい音が聞こえ、飛べば心地よい風が流れる。自由自在。
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