在眼前(眼前に在り、がんぜんにあり)の意味
大切なものはすべて目の前にある
「大切なものは目の前にある」という禅語です。
人はついつい、自分で自分の目を隠してしまい、大切なものを見失ってしまいます。
大切なものは目の前にあるにも関わらずです。
解説
目の前にある大切なものを見失った人は、どうするでしょうか。
本を読んだり、遠い外国に出かけてみたり、大切なものを探し始めます。
あるいは、無理な勉強、禁欲生活、実行不可能な計画、苦行・修行をしようとしてみたりします。
禅ではこれらすべてを否定しています。
さまよわない
ただ、目の前にある“そのもの”を見ればよいだけのことです。
見失ってしまうのは、私たちの自分の心の目を自分で閉ざしてしまっているだけです。
平凡であたりまえな事実、ときに受け入れがたい現実こそが、私たちの“大切なもの”ということです。
理想の地はどこにあるか
目の前の当たり前の現実を受け入れられない人は、理想の地を求め始めます。
理想の人びとに囲まれ、理想の暮らしを送れる場所があると考えたりします。
しかしそのような心の状態では、どこに行っても目の前にある“素晴らしさ”を一切見出すことができません。
どこまで行っても理想に飢える、まさに餓鬼のような心理状態です。
理想の地はどこにあるのか
禅の考える理想の地は、どこにあるのでしょうか。
「今、あなたがいるその場所」が理想の地であると禅では考えます。
極楽や天国は今、目の前に広がっていると考えます。
「両目ではっきりと目の前の現実を見て、受け入れ、取り組み、楽しめ」という徹底自力・主体的な生を主張する禅らしい考え方です。
この地が極楽
自分がいるこの環境、この地をおいてこれ以上の場所はないという確信を表現した禅語がいくつかあります。
禅では逆に夢想や妄想を退けます。
禅では「夢」という言葉を用いることがありますが、この「夢」とは自分自身が直面する現実のことを言います。
心の目を閉ざせば
素晴らしい仲間、環境にあっても、心ひとつでそのありがたさを見失ってしまいます。
目の前にある大切にすべきものを見出すことができる力、これを養いたいものです。
心の目を開けば
一見受け入れがたい現実も、心機一転取り組めば楽しくなってくるものです。
禅では、そういう人に誰でもなれると考えます。
「自分自身が仏である」というのが、禅の最も重要な宗旨です。
自信の宗教
目の前の現実を受け入れ、自分のいる場所を極楽であると考えられたら。
自分自身が仏であると確信できたら。
どんどん自信がついてきて、どんどん力が湧いてきます。
この心持ちこそ禅の目指す心境で、いくつかの禅語はこの心持ちを表しています。
まとめ
目の前の大切なものをしっかりと見つめることは意外と難しいものです。
日々の生活はやることがいろいろありますし、人間関係は複雑ですし、周囲にはノイズのような情報が溢れています。
いかに心の平静を保ち目の前にある大切なものを見つめるか、日常生活の実践方法を禅は用意してくれています。
下のその一部に記しておきます。
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日常生活で実践する
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禅は空理空論を避け、日々の実践を志向します。
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編集後記
目の前にあるよ、と。一体何が目の前にあるというのだろうか。
探し物が目の前にあるよ、といってくれているのだろう。
では、その探し物とはなにか。それはたぶん大切なものだろうし、もちろん探し求めているものだろうし、悟りのようなものかもしれない。
芳賀は浄土は眼前に在り、としていてまさに衆生本来仏なりということである。いわずもがなテストの答えはそこにはないのだが、怒りの原因や不幸せの訳などは眼前に在り、ということになるだろう。
地獄眼前に在り、ともできるそうである。
どうあれ、およそ精神的に探し求めているものは、一切眼前に在りとすることもできる。
だから、座ってそれを見ればよいし、そっと取り出すこともできる。
慌てて探しに出かけてしまってはいけない、近きを知らずして遠く求むる儚さよ、である。
幸せの青い鳥は遠くにいない。
目の前で鳴いているよと。幸福は遠く地の果てにはあるのではなく、福寿は海のごとく溢れていて、どっぷり肩まで使っているよと。
あらゆる悩み相談には、うんうんと聞いてあげて、その答え眼前に在りと悟ってもらう作業なのかもしれない。
或いは一緒に目の前にあるものをそっと探して取り出すような。
慌てていてはそれができない。
その探し物の作業が大切な作業なら、静かに慎重にやらなければならない。針の穴に糸を通すように。
大騒ぎをしたり、息を切らしたり、動き回っていてはそれはできない。
腹を据えて、腰を据えて座らなければ。
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