山呼万歳声の意味「山々に向かって繁栄を願ったことが原義」
山々が万歳三唱する禅語の世界とは
(やまよぶばんざいのこえ)
山呼万歳声(山呼ぶ万歳の声)は元々は「人が山に向かって声を出している」という意味でしたが、禅の文脈では「山が万歳をしている」という擬人的な意味で捉えます。
今という瞬間を全身でありがたく感じる言葉です。
禅語ならでは珍奇な状況の描写ですが、山という具体的な比喩で抽象的な表現をしている点も禅語らしい特徴的な一語といえます。
それでは意味をみていきましょう。
読み方
「山(やま)呼ぶ、万歳(ばんざい)の声(こえ)」と読みます。
山は呼ぶ万歳の声と、「は」を入れてもよいですが、入れない方が調子が良いのではないでしょうか。
「さんこばんぜいのこえ」と漢語読みしてもよいです。
出典
『漢書 武帝紀』の故事に基づいて句と言われています。
昔の中国で、国の発展を祝う催事の場で、幹部が「ばんざい」を繰り返したら、やまびこになって山に「ばんざい」がこだましたという喜ばしい言葉です。
禅では少し違った捉え方をしますので、後述します。
万歳は1万年のことで、皇帝の長寿を願う意味で、中国で使われていた言葉です。
日本でも天皇陛下に対する言葉として用いられてきた歴史があります。
禅が捉える意味
禅では人間でなくむしろ、「山々が実際にばんざいを繰り返している」と捉えます。春の山を「山笑う」と表現することがありますが、それに近いです。
禅を含めた仏教の思想では、山川草木がすべて仏であるという考え方をするため、山の擬人化ということが時に起きます。
禅は山で例えるのが好き
また、禅は静かにどっしりとしたさまを座禅をしている様子に見立てて「山」を用いることがあります。
したがって、山にちなんだ禅語は数多くあります。
- 一雨潤千山(いちう せんざんをうるおす)
- 東山水上行(とうざん すいじょうこう)
- 青山元不動(せいざん もとふどう)
- 山雲海月情(さんうん かいげつのじょう)
- 渓声山色(けいせい さんしょく)
- 山中無曆日(さんちゅう れきじつなし)
山が動かないだけでなく、静かであること、人がいないことなどを喩えた言葉が多いです。
禅宗は山と海ならば圧倒的に「山の宗教」と言える部分があります。
海の例えも多いですが、“広い”のメタファーが多く、交易の海よりも田舎の山が禅には合っているのかもしれません。
あらゆるものが仏だから
禅に限らず仏教全般に、山も海も何もかもに仏性を見い出します。
心落ち着けて見渡してみれば、すべてが仏なわけですから、幸せなことこの上ありません。
山ももちろん大喜び、万々歳というわけです。
仏を自然に見出す
全身で自然を感じて「仏」の声を聞こうという禅語はこちらから
使い方
一般的に使われる熟語というよりは茶掛けの掛け軸などで使わることがほとんどかと思います。
これまで見てきたような経緯から、次の3つのような使い方があるかと思います。
皇室のお祝いごとにちなんで
この言葉の由来や、万歳の由来かから考えても、これが一番意を得た使い方ではないかと思います。
天皇誕生日、ご成婚、色々は慶事にちなんで、使ってみてください。
一家が栄えることを祝して、子供の誕生など
万歳は1万歳(年)という意味で、中国では皇帝に対してしか使ってはいけない時代があったそうです。
今日の日本で使うにあたっては、一家・一族・一会社の長らくの繁栄を願って、使ってよい言葉かと思います。
「何はなくともめでたい日だ」と
この使い方が禅味には富んでいます。
ただ何もなく、いつものように山がそこにあるという風景に幸せを感じるのが禅です。
こういう禅語は他にもいろいろあります。
禅は身体的:実際にやってみよう
禅のことばは高度に形而上学的ですが、一方で具象的で身体的でもあります。
実際に世界はそうなっていると禅は考えるためです。
ここでは「山」「万歳」が大きなヒントになります。
禅は具体的:山に登ってやってみる
このとき必ず嬉しい心持ちでやらなければなりません。
馬鹿みたいじゃないか、などと思わずに自分を笑ってしまうようなことでも構いませんから、楽しく万歳三唱してみましょう。
この時、山も楽しそうだと感じられれば、山呼万歳声を体感できたことになります。
山も万歳していると感じられれば、言葉の意味のとおりの体感が得られたことになります。
禅問答に挑戦する
多くの禅語は禅問答に由来しています。
興味のある方は挑戦してみてください。
「山」は座禅のメタファー
禅では「山」は座禅をする人に例えとして用いることがあります。
オンラインで座禅会に参加できる時代になりました。
毎日参加した体験レポートはこちらから。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今日も良い一日をお過ごしください。
最後に山でなく、「海」の言葉も紹介しておきます。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
編集部後記
実際に自分の体を動かして、自分で声に出してみて、自分の目で山をみて、体感することが大切です。実際に体験すると、健やかな気持ちになり、楽しい心持ちが持続し、小さな悩みがなくなっていくのではないでしょうか。この体感を得られると、今度はこの言葉を口にしただけで、健やかな気持ちが蘇ってくるようになります。
万歳はほとんどの人ができますし、山もどこにでもあります。
お金のかからない、効果抜群の禅語です。
- 少し遠出しなければならない人は、実際に少し遠出をしてみてください。
- 腕をあげるのが難しい人は、万歳の声だけでも大きな声で出してみましょう。
- 声を出すのが恥ずかしい人は、心のなかで大きな声で出してみましょう。
- できるだけ全身を使って行うところがポイントです。
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- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
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- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
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- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
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