破襴衫裏盛清風(はらんさんりにせいふうをもる)
モノにこだわらず、さわやかに生きる人
意味
破襴衫裏(はらんさんり)が分かりづらいので、まずここから解説していきます。
破襴衫裏(はらんさんり)
破・襴衫・裏(は・らんさん・り)と分けてることができます。
まずは襴衫(らんさん)から
中国の伝統的な男性の服装のことで、唐代から学者や役人の服装として用いられていました。
朝鮮でも使われていました。
ここでの襴衫(らんさん)は、一般的に衣服のことを指していると捉えてよいです。
破襴衫(はらんさん)
破襴衫とはすなわち、擦り切れた服。
破襴衫裏(はらんさんり)
擦り切れた服の裏地のこと。
盛清風(せいふうをもる)
本来綿を詰めるところですが、ここでは清風を盛るとしています。
禅では「清風」に特別な意味があります。
清風
「清風」は禅では物事にこだわらない生活態度を表します。
特に物理的なモノを気にしないことを示し、発展して経済的な富貴に心を留めないさまを表します。
ぼろを気にせず、颯爽と行く人
ぼろの裏地に清風を詰めて颯爽といく。
すなわち身なりを気にせずに、富貴を気にせず、心地よく生きる人ということになります。
意訳
ぼろを来て冬の日を行く。ぼろの切れ目からは寒風が入り込み、身震いするほどの寒さ。
見た目にも寒々しい。
しかし、この人は特に寒いようでもなく、また見た目のみすぼらしさに気後れする様子もない。
まったく、そのような外見などどうでもよいと。
清潔を保ちながらも暖衣に執着せず、ぼろの切れ目を指摘されれば、清風を盛っておりますとこともなげに微笑む。
その心持ちに触れると、その豊かさは限りなく感じ、かえって気にしていた外見の豊かさにはどことなく貧しい感性に思えてくる。
言葉の使い方
この言葉の季節
寒々しい季節にこそふさわしい言葉かと思います。
すなわち冬ということになりますが、さわやかな風を感じる夏で用いることもあるかと思います。
禅語には本来季節はありませんが、あまり立派とは言えない服でどこかに出向くタイミングで心に念じたい言葉です。
一字違いの破襴衫裏包清風(はらんさんりにせいふうをつつむ)
「盛る」ではなく「包む」の方が多様されます。
後者の方が古典にあって、清風を包むはどうやら芳賀幸四郎のオリジナルのようです。
しかし、清風を包むでは8字・字余りで切れが悪く感じます。
清風を包むの方が、「破襴衫裏(はらんさんり)に」から7字・7字で日本語の調子がよく感じます。
また清風を包むも文脈によってはしゃれて聞こえますがが、清風を盛るとすると、清風をどっさり真綿を裏地に詰めるように盛ってしまうところが味がよい語感になります。
芳賀幸四郎らしい格好のよさとも言、芳賀自身、最も好きな禅語の一つとのことです。
まとめ
着るとも分からない新しい服を買おうとしているあなたにもおすすめの言葉です。
破襴衫裏(はらんさんり)に清風を盛る、その気風が実に爽快な一語です。
日常生活のなかにある"禅"文化を探す活動をしています。「心に響く禅語」解説やオンライン座禅会を開催しています。
後記:身なりを気にするのもほどほどに
どこに出かけるにも、誰に会うにも、心持ち一つで会いたいものです。
身繕いをおろそかにすることがよいとは思いませんが、髭もじゃでは無精であるし、ワイシャツくらい皺を伸ばして臨みたいものです。
相手のために、自分のために
髭を整え、ワイシャツにアイロンを当てて参りました、というのが人にある、これも心の現れの一つでしょう。
「あなたに会うために、高価な服を求めて参りました」と言われて特に心地よい人はいないでしょう。
清潔さくらいはいわゆる身だしなみとして必要で、それは言わずもがなです。
しかし程度を超えて、衣服・髪・化粧に気を取られては単なる自己愛で、他人との関係のためのものにならない。破襴衫裏(はらんさんり)に清風を盛った人が颯爽と現れたなら、その飾らずもちきんとした姿はその場に安心感をもたらすことと思います。
何も持たないという究極の理想
あるいいは布袋のように、清潔ささえも失った乞食のような人であっても、侮ることなく接したいものです。
服すら着ていない裸足のおじさんが布袋様かもしれない。彼は人々に幸福をもたらす存在である。仏教では立派な仏僧は必ずしも立派な服を着ていない。
布袋などその典型である。
むしろ、その前衛的な存在である。
白隠は布袋をよく書いた。街道をのらのらと歩くみすぼらしい男に仏をみたということです。
我々は布袋になり得るかもしれないし、布袋に会うかもしれません。
いずれにしても心が曇って目が曇れば、どうでもよい外側だけしか見れなくなり、それに捕らわれてしまいます。
日常生活で実践する
身の回りを片付ける
禅は空理空論を避け、日々の実践を志向します。
身のまわりの片付け・清掃から始めてみてください。
最も始めやすく効果の出る実践方法です。
禅問答に挑戦する
多くの禅語は禅問答に由来しています。
興味のある方は挑戦してみてください。
座禅をする
座禅は最も基本的な”禅”の実践になります。
オンラインで座禅会に参加できる時代になりました。
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もっと短い禅語
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突き詰めると、たった一字でも味わい深い意味が生じるのが禅の世界です。
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- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
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- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
- 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
- 「喝!」:最も短いアドバイスの言葉
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