渓声山色(けいせいさんしょく)の意味
本当のことはあまりにも複雑で豊かだから、言葉にできない
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渓声山色は北宋の政治家蘇東坡の漢詩の一部を抜き出し、短くした言葉です。
蘇東坡は波乱に満ちた政治官僚として生きるなかで禅を学び、多くの漢詩を残しました。
その詩が禅の観点で優れているとして、後世の禅者の間でたびたび用いられるようになりました。
原文
まずは原文から確認していきます。
蘇東坡(そとうば)
溪声便是広長舌
山色豈非清浄身
夜来八万四千偈
他日如何人挙似
書き下し文
溪声(けいせい)便(すなわ)ち 是(こ)れ 広長舌(こうちょうぜつ)
山色(さんしょく)は 豈(あ)に 清浄身(しょうじょうしん)に あらざらんや
夜来(やらい)八万四千の偈(げ)
他日(たじつ)いかんか人に挙似(こじ)せん
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意味
次に現代語訳です。
谷川のせせらぎがすべてを語っている(仏の悟りを語っている)
山の姿はそのまま清浄法身である(清らかな理想の仏の姿である)
昨晩から無尽の説法に囲まれている
これからどうやって人に伝えることができるだろうか
さらに短く
何でもそぎ落としていく禅では、これを削っていきます。
後の禅僧が短くしました。
溪声広長舌(けいせい こうちょうぜつ)
山色清浄身(さんしょく しょうじょうしん)
八万四千偈(はちまんしせんのげ)
如何人挙似(いかんかひとにこじせん)
短い現代語訳
現代語訳も短くしてみましょう。
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川のせせらぎが仏の教えだった
山の姿が、仏の姿だった
無数の教えに囲まれていた
これを人に伝えるのは難しい
すべての仏性を見出す禅の境地と、それは体感で得るので理屈で人に理解させるようなものではないという2つの意味が込められています。
さらにさらに短くしたのが”溪声山色”
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しかしこれでも長いとする禅では、さらに大胆に削って
溪声山色
として用いるようになりました。
深い意味
![](https://nichi-zen.site/wp-content/uploads/2023/06/landscape-g84eb802cc_640.jpg)
意味は上記のとおりで、四字では表しきれない意味がありますが、元々禅では言葉自体を軽視するので、この四字に複雑で豊かな体験を込めて使います。
その意を掴んだもの同士であれば、この溪声山色だけで「そうですなぁ」となるわけです。
逆にどれほど言葉を尽くしても、分かっていない者にはチンプンカンプンということです。
難しい字を用いることがよくある
掛け軸では溪聲山色と声の字を難しく書いている場合があるので、注意が必要です。
他の字は読みやすいので、溪声山色と判別はできるかと思います。
同じ意味合いの禅語
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同じ意味で用いる言葉がいろいろあります。
- 水声山色(すいせいさんしょく)
- 山光水色(さんこうすいしょく)
- 澗水松風悉説法(かんすいしょうふう ことごとくほうをとく)
- 蛙鳴蝉噪是仏声(あめいせんそう これぶっしょう)
- 山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)
- 雨竹風松皆説禅(うちくふうしょう みなぜんをとく)
- 水鳥樹林念仏念法(すいちょうじゅりん ねんぶつねんぽう)
- 古松談般若 幽鳥弄眞如(こしょうはんにゃをだんじ ゆうちょうしんにょをろうず)
まとめ
世界に真理があふれていること、どこに行かずとも周囲にいっぱいあって、目・耳など五感でそれが感じられること、
また、自分がその真理の一部であること、
とても心に安らぎを与えてくれる言葉です。
そしてなかなか人と共感できないという小さな落胆と、時にわずかな言葉で互いの境地を理解しあえる合言葉がこの語です。
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