山高月上遅(やまたこうして つきのぼることおそし)
大事はゆっくりと実現していく
努力の継続を謳う一語です。
禅はいつでもだれでも悟ることができると説きますので、長年の努力といったことを強調することはそれほど多くありません。
その意味では希少な禅語で、しかし座右の銘としては用いやすい言葉かと思います。
この語の物語
高い山に隠れて月の姿が、なかなかよく見えません。
なかなか見えない
月の姿が全部見れるようになるには、月が高いところま上がる必要があります。
我々の人生も高みを目指すならば、同様に一歩ずつ一歩ずつ登っていかなければ、頂上にはたどり着けません。
一歩ずつ登る
低い山を登る以上に、継続する時間と着実な歩みが必要です。
ようやく頂上へ
苦労は多いですが、登り切った景色は格別のものがあるはずです。
そのためには、そういう山を自分で設定して、登っていく必要があります。
近しい意味の禅語
こうした長い道のりや下積み生活、着実な歩みを表した禅語がいくつかあります。
ただし、それほど数が多いわけではありません。
理由はこの後解説していきます。
- 自彊不息(じきょうやまず)
- 雨洗風磨(うせんふうま)
- 泥多仏大(どろおおければ ほとけだいなり)
- 白珪尚可磨(はっけいなおみがくべし)
- 地肥茄子大(ちこえて なすだいなり)
- 学道如鑽火(がくどうは ひをきるがごとし)
- 一山行尽一山青(いっさんいきつくせば いっさんあおし)
解説
一般的な自己啓発的な意味の取り方は上記のとおりです。
次に、禅の文脈での意味をみていきましょう。
月は「悟り」の意味
禅の文脈では、月は「悟り」のメタファーとして用いられることがほとんどです。
すなわち「「山高月上遅」は、高次の悟りを得るには時間がかかるということを言っていることになります。
頓悟(とんご)・漸悟(ぜんご)
冒頭申し上げた通り、禅はいつでもだれでも悟れると主張しています。
この考えは、瞬間的にすぐに悟れるということで、これを頓悟(とんご)と言います。
逆の考え方は、長年の修行を経てゆっくりと悟るという考え方です。
これを漸悟(ぜんご)と言います。
時間をかけて得る悟り
禅は頓悟が主体ですが、漸悟を否定するわけではありません。
「山高月上遅」は漸悟を表した言葉ということになります。
この語の季節
禅の文脈で、月は秋の言葉として用いられます。
ほとんど例外はありません。
美しい満月の季節に、山の向こうから上ってくる月が、この語の示す情景です。
月の禅における重要アイテム
「月」は悟りを表し、また秋の美しい情景を描くのに適したものでもあるため、非常に多くの禅語があります。
秋の禅語をお探しの方はこちらもチェックしてみてください。
まとめ
高い山の頂上を目指すならば道は険しいことでしょう。
悟りの道は遠いものだと笑いながら、時に休みながら、一歩ずつ歩んでいきましょう。
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日常生活で実践する
身の回りを片付ける
禅は空理空論を避け、日々の実践を志向します。
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もっと短い禅語
禅語は基本的に短いものが多く、しかしながら意味が深いのが特徴です。
突き詰めると、たった一字でも味わい深い意味が生じるのが禅の世界です。
ぜひこちらもチェックしてみてください。
- 「一」:一とは自分自身のこと
- 「風」:目に見えない、とどまらないもの
- 「月」:禅では悟りの喩え
- 「夢」:一切は夢という現実
- 「無」:無を強調するのは禅の特長
- 「道」:道とはすなわち禅の道
- 「雪」:禅は冬の宗教
- 「心」:何はなくとも心が大切と考えるのが禅
- 「坐」:座禅が“禅”の基本。しかし執着はしない。
- 「雲」:消え去る雲に捕らわれるな
- 「山」:静寂にして不動
- 「花」:何も考えずに生き抜く美しさ
- 「茶」:日常生活のメタファー(たとえ)
- 「水」:老荘の影響を受けて水は良きもの。川を意味する。
- 「喝!」:最も短いアドバイスの言葉
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