山静似太古(やましずかなることたいこににたり)
静かな山は禅の理想の地であり姿
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漢詩を元にした禅語です。
山は禅語でも最も頻繁に用いられるモチーフです。
まずは、漢詩全体の意味を確認していきます。
出典
宋代の詩人、唐庚(とうこう)の五言律詩が出典です。
『醉眠』(ようてねむる)
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山靜似太古
日長如小年
餘花猶可醉
好鳥不妨眠
世味門常掩
時光簟已便
夢中頻得句
拈筆又忘筌
書き下し文
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山静にして太古に似たり
日長くして小年(しょうねん)の如し
余花(よか)なお酔うべし
好鳥(こうちょう)も眠(みん)を妨(さまた)げず
世味(せいみ)には門 常に掩(おお)い
時光(じこう)簟(てん)已(すで)に便(べん)なり
夢中(むちゅう)頻(しき)りに句を得たり
筆を拈(と)ればまた筌(うけ)を忘る
意味
世味は世情のことです。
時光は時の流れ、簟は竹で編んだむしろ(しきもの)のことです。
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山は太古がそうであったろうに静かそのもの、
一日は一年ほどにも長く感じる。
満開を過ぎた花を眺めながら酒を飲み、
美しい鳥の鳴き声を聞きながら、眠りにつく。
世の喧騒が入ってこないように門は閉めっぱなしで、
竹の寝床が調子が心地よい。
夢の中で何度も詩句が浮かんだが、
筆を取ると思い浮かんだことをすっかり忘れている。
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解説
出典の詩は、すっかり浮世を離れて生活する人が表現されています。
娑婆の空気がまったく届かない山居で、鳥や花とともに暮らし、無為の暮らしに徹しています。
山は太古のように静かだと言っていますが、時間の概念がなくなり、古今の区別もなくなっているような悟りの境地を禅ではこの句に見出します。
禅における「山」
山は座禅をする人を表すことがあります。
動かざる存在、静かなさまになぞらえてのことです。
出典の詩では、ただ山のことを言っていますが、禅語にあっては座禅の意味を取って用いてもよいかと思います。
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- 渓声山色(けいせいさんしょく)
- 無山不帯雲(やまとしてくもをおびざるはなし)
- 山中無曆日(さんちゅうれきじつなし)
- 一雨潤千山(いちう せんざんんをうるおす)
- 青山元不動(せいざんもとふどう)
- 山呼万歳声(やまよぶざんぜいのせい)
- 雲去青山露(くもさってせいざんあらわる)
- 雨収山岳青(あめおさまってさんがくおあし)
- 山空松子落(やまむなしくして しょうしおつ)
- 山寒花発遅(やまさむうして はなのひらことおそし)
- 山是山水是水(やまはこれやま みずはこれみず)
- 一山行尽一山青(いっさんいきつくせば いっさんあおし)
夏の禅語として
用いる季節は、山の涼しさが感じられる夏の禅語かと思います。
春はむしろ賑やかな季節として、秋は月ととも謳われることが多く、冬は雪とともに静けさというよりも厳しさの意味合いで「山」は用いらえれます。
この語については夏がふさしそうです。
同じ詩から禅語を見出す
・余花猶可酔
・拈筆又忘筌
このあたりの句も禅語として用いてよい禅味があるかと思います。
ただ、日本語で常用でない字・単語があり、あまり好まれて用いられてはいません。
まとめ
仙人のように世情を離れて暮らす様子が印象的な漢詩でしたね。
時間を超えた悠久の静山に、理想を見出す禅語です。
途中で紹介したように「山」にちなんだ禅語は多くあります。
この機会に他の山の禅語にも触れてみていただけますと幸いです。
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